マツエクサロンの「人材育成課題」は”スクール開校”で解決されるのか?メリット・デメリット解説

この記事をシェアする
サムネイル

サロン経営における課題のひとつが、「人材育成」。現場の施術者はもちろん、経営者のみなさんも、常に人材を採用し、育成していくことの難しさに悩んでいることでしょう。そんな時、マツエクサロンの経営者なら一度は検討するであろう「スクール開校」。今回はそのメリット・デメリットやスクール立ち上げへの道筋について解説します!

マツエクサロンの人材育成課題とは

まず、マツエクサロンで直面しやすい人材育成の課題から考えていきましょう。大きなサロンであれば、しっかりと研修制度を設けている場合もありますが、一般的なサロンでは手の空いた先輩アイリストが閉店後や隙間時間に指導するパターンがほとんど。サロンの状況によってはあまりに人が足りず、満足に研修も受けられないまま独り立ちさせることもありますよね。その場合、サロンではどのような人材育成課題が生まれているのでしょうか。今回は経営者視点と、育成する側のアイリスト視点、そして育成される側のアイリスト視点の3点から考えていきましょう。

“経営者視点”での人材育成課題

・アイリストの技術レベルが統一できない
・指導するアイリストの時間を確保できない
・育成中は指導するアイリストの売上が犠牲となる(生産性が低下する)
・明確な基準がないまま指導が行われる
  →育成にコストがかかっているにもかかわらず、いつまで経ってもアイリスト全体のレベルを底上げできない。

“育成する側のアイリスト視点”での人材育成課題

・自分の接客や施術に追われ、教える時間が確保できない
・新人アイリストが独り立ちするまで一時的に業務が増える
  →施術と育成の両立が難しく、従業員満足度低下の原因に。

“育成される側のアイリスト視点”での人材育成課題

・見よう見まねで技術を習得するしかない
・アイリストによって指導内容が異なり混乱する
・知識の幅が狭くなる
  →練習量や知識量不足などで、自信を持って施術に入れない

以上のような課題が考えられるでしょう。
このすべての根源は、教育体制が整っていないこと。だからこそ、育成の専門機関であるスクールを開校して、必要な技術を同じ基準で指導し、一定の技術を身につけた後でサロン勤務に移るという流れを、経営者としては思い描くでしょう。

では、マツエクサロンのスクール開校にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。次の項目で詳しく学んでいきましょう。

スクールを立ち上げるメリット・デメリット

スクールを開校するにあたって、メリットもあればもちろんデメリットもあります。

メリット

1.正しい知識を持ったアイリストを育成できる
2.施術よりも1時間当たりの単価が高い場合もある
3.誰が担当しても同じ基準で施術ができるよう平準化される
4.サロンのブランド力UPにつながる

デメリット

1.人件費がかさむ
2.コストがかかる
3.収益は少ない
4.施術と講義の両立が難しい

いかがでしょうか?

デメリット解説

まずデメリットから詳しく見ていきましょう。

1.人件費がかさむ

スクールを開校する場合、まず誰が講義を担当するのか考えなくてはなりません。マツエクサロンのスクールの場合、技術を教えることが主な目的です。そうなるとやはり、高い技術を持ったアイリスト、つまりトップアイリストによる講義が、最もレベルの高い内容になるでしょう。
しかし、トップアイリストになると、サロン内でも1位2位を争うほどお客様からの人気も高く、予約が常に埋まっている状態ですよね。講義に時間を割くためには、その予約を一部お断りする必要があるでしょう。そうなると、サロンとしてはトップアイリストの賃金だけでなく、本来生まれるはずであった売上も背負わなければなりません。

例えば、平均売上が月90万円、年収300万円のアイリストが、1ヶ月程度講師を担当すると仮定しましょう。
1ヶ月分の売上とアイリストの賃金分の人件費を、スクール運営のために割くこととなりますよね。このアイリストの場合、年収300万円であるため、月収はおよそ19万円。売上は月に90万円であるため、合算すると、サロンとしては月に100万円程度の損失が見込まれます。その損失を人材育成のための“投資”と捉えられるほどの規模のサロンなら、スクール開校を検討してみても良いかもしれませんね。

2.コストがかかる

スクールを運営するためには、人件費以外に、家賃や光熱費、教材費などさまざまなコストがかかります。また、サロン内にスクールを併設する場合と、別途場所を確保してスクールを開校する場合でも、かかるコストには違いが生まれるでしょう。

【サロン内併設型】

サロン内のスペースを使って、スクールを開校。ベッドを何台か減らしてスペースを確保し、スクール用の空間を作ります。しかし、ベッドを減らすということはつまり、その分生産性も低下するということ。一見、コストを抑えられるイメージがあるかもしれませんが、常にベッドがフル稼働するほど人気のサロンの場合、売上低下に直結します。経営者としては、別途スペースを確保してスクールを開校する方法を考えたいですね。一方で、ベッドの稼働率が低くスペースが余っているサロンは、スペースを有効活用する意味で、スクールを併設する選択肢もあるでしょう。

【スクール独立型】

新たにスペースを借りて、スクールを開校します。サロン内の生産性は維持できますが、教材費の他に家賃や光熱費が必要です。コストは目に見えて増加しますが、計算しやすいメリットもあります。

どちらもコストがかかり、一方でメリットもあるため、一概にどちらの形式が良いとは言えません。サロンのスタイルに合わせて、スクール形態も変える必要がありそうです。コストを抑えつつ、人材育成の場を確保すること。難易度が高い問題だからこそ、経営者の手腕が問われると言えるでしょう。

3.収益は少ない

マツエクサロンのスクールは、通ったからといって何かの資格が得られるわけではないですよね。そのため、わざわざ授業料を払って通う人は少ないことが現状です。
スクールは主に、美容師からアイリストへ転職を希望する人や美容師免許取得後すぐの新人さんなど、マツエクに関する知識や技術のないアイリストを採用したサロンの、研修の場として活用されています。また、他のサロンで経験があるアイリストでも、サロン内での施術方法や考え方について学ぶために短期間通う場合があるでしょう。この2パターンに関しては、研修の意味合いがあるため、受講料を免除しているサロンがほとんど。つまり収益にはつながりません。
一方、外部からの受講生は、例えばボリュームラッシュやアップワードラッシュなどの新技術を学びたい人や、下まつ毛への施術などの少し難易度の高い技術を身につけたい人が1日単位で通う程度。まとまった期間通い続ける人は稀でしょう。
経営者の中には「サロンの収益とスクールの収益の二本柱を確立したい」と考える人もいますが、ターゲット層が狭いことを考えると非常にリスクは高いと言えます。

4.施術と講義の両立が困難

最後に、講師を担当するアイリストのスケジュール管理も懸念事項です。講義担当のアイリストを別で確保するのではなく、スクールを併設し、アイリストとしての仕事と講師の仕事を兼任させる場合は注意が必要。
トップアイリストになるとサロンに訪れる多くのお客様からの信頼が厚く、「どうしてもこの人の施術を受けたい!」と言われるお客様も珍しくありません。つまり、いくら講義に専念してほしくても、お客様からの要望がある限り施術と両立させなければならないということ。もちろん、授業も毎日1日中詰まっているわけではないため、そもそも施術と講義のバランスを上手く取る必要があります。
しかし、予約はあくまでお客様の都合が優先。
場合によっては講義の時間を先に確保し、残った時間の中からお客様に予約できる日を選んでいただくこともできますが、何度もそれが続くとお客様からは「予約が取りにくくなって不便だ」と思われてしまうでしょう。気が付いたら、大切なリピーターがサロンから離れてしまう場合もあります。サロンを長く運営していくうえで、リピーターの存在は大変貴重。一時期の忙しさに捉われてないがしろにすると、サロン運営に大打撃を与える可能性もあるのです。
だからといって、新人育成を後回しにしてはスクールを開校する意味がないですよね。そういった意味で、予約と講義のバランスが困難な点が、スクールを併設するデメリットと言えます。

以上4つのデメリットについて紹介しました。いかがでしたか?いくら人材育成に課題を感じていても、勢いだけでスクールを開校するにはリスクが高いことが理解していただけたのではないでしょうか。
しかしもちろん、デメリットばかりではありません。それ以上のメリットもあるのです。こちらも詳しく見ていきましょう。

メリット解説

1.正しい知識と高い技術を持ったアイリストを育成できる 

スクールでは、技術はもちろんマツエクの基礎知識についても講義を受けられます。例えば、マツエクとは切っても切れないグルーアレルギーの話も、基礎知識のひとつです。基本的に、独自の教科書に基づいた講義が行われるため、いつだれが講義を受けても同じ情報を得られます。研修制度の整っていないサロンでよくあるトラブルといえば、アイリスト同士の認識の相違。例をもとに考えてみましょう。

「シアノアクリレートは、水分に反応して硬化する」という知識は事実であるため、どこのサロンでも同じ考え方でしょう。しかし、例えば、「グルーアレルギー」については、考え方にバラツキが起きやすいので要注意。A社のサロンでは「施術をお断りしてください」と指導されていても、B社では「ブチルグルーでパッチテストをして異常がなければ、施術してください」という方針であったりします。
確かに、どちらもリスクマネジメントの観点からは正解で、間違ってはいないのです。しかし、A社で働く上でB社の考え方は間違いであり、反対にB社で働く上ではA社での考え方は間違いとされるでしょう。

良かれと思ってしたことでも、会社の考え方と違う働き方をした場合、トラブルが起きても会社は従業員を守れません。だからこそ、会社の考え方とスタッフの考え方はある程度揃えておく必要があるのです。

しかしA社からB社へ転職した場合、指導を受けなければその違いに気づけない可能性もありますよね。そのまま気づかずA社の考え方に沿った働き方をした結果、B社の考え方とはズレてしまうため、サロン内でのトラブルの原因となります。さらにこのように、A社出身のアイリストと、B社出身のアイリストからそれぞれに指導を受ける際、育成される側の混乱を招くことも。

そこでスクールの出番です。スクールを開校していれば、そういった考え方についても統一できます。経営者とアイリスト全員が、物事を同じ角度から考えられるようにすることも、スクールを開校する目的と言えるでしょう。

また、先ほど、トップアイリストにこそ講師をお願いするべきだとご説明しました。基本的にトップアイリストは、お客様からの評価も高くスケジュールはいつも埋まっているはず。新人育成に時間を割けない場合が多いですよね。おそらくスクールを開校しなければ、トップアイリストから指導を受けられる機会は少ないでしょう。しかし、スクールを開校し、トップアイリストに講師を担当してもらえれば、その高い技術と知識を多くの新人アイリストに共有できます。
新人アイリストにとっては、初めて講義を受けるアイリストの技術レベルが指標となるでしょう。一般的なアイリストではなくトップアイリストになるだけで、目指すべきゴールが自然と高くなりますよね。さらに言えば、サロンの場合はトップアイリスト1人に対して、指導できるアイリストは1~2名程度。施術の合間を縫って指導している以上、あまり多くのアイリストを育成することは不可能です。しかし、スクールは違います。講義中はアイリストの育成にだけ力を注げるため、一度に複数のアイリストの指導ができるのです。

以上の理由から、スクールを開校することで正確な知識と高い技術を持ったアイリストを、数多く輩出できると言えるでしょう。

2.施術よりも1時間当たりの単価が高い場合もある

スクールでの授業料は、各経営者が自由に設定できます。場合によっては、1時間施術するよりも1時間講義を行ったときの方が利益を出せることもあるでしょう。ただし、先ほども紹介した通り、外部からの受講生はあまり多くありません。継続的に高い利益を出し続けることは難しいと言えます。

3.誰が担当しても同じ基準で施術ができる

スクールを併設しているサロンでは、未経験者・経験者関係なく、まずはスクールに通ってもらうという形式を取っていることが多いようです。これは、誰がどのお客様を担当しても同じ方法で施術を進められ、かつ同じ基準で仕上げられるようにするため。
サロンによっては「Aさんは上手だけれど、Bさんはもうお願いしたくない」とお客様から言われるほど、アイリスト間でのレベル差が大きいですよね。しかし、サロンの生産性という観点から考えると、スタッフ間でのレベル差によって予約にムラが生まれると非効率。1対1でしか施術できないマツエクサロンの場合、1人にばかり予約が集中する形式はあまり生産性が高いと言えないのです。できれば、働くアイリスト全員が同じぐらい予約を取れている状況が最も生産性が高いと言えます。そのためにも、お客様から「このサロンは誰が担当になっても安心して任せられる!」と信頼してもらう必要があるでしょう。
だからこそ、高い技術を持ったトップアイリストから直接指導をしてもらい、同じレベルまで引き上げてもらわなければなりません。そうすると、新人アイリストでも早い段階から予約を集めることができるでしょう。

4.サロンのブランド化につながる 

コストもかかり、大きな収益も望めないスクールの開校。しかし、それを超えるメリットが、サロンのブランディングです。今、マツエク業界をはじめ多くの企業が人手不足。働き手が有利な状態になっているため、働きやすい環境を整えている企業にばかり人が集まっています。働きやすい環境とは人によってさまざまですが、スクールを開校するほど教育制度が整っているサロンは珍しいため、転職を検討しているアイリストにとっては「人材育成に投資できるほど、人を大切に考えているサロンなのでは?」と魅力的に映ります。
魅力的なサロンには、多くの求職者が集まるため、良い人材を選抜しやすくなるでしょう。
優秀なアイリストが集まればまた、サロンの評価も向上。顧客満足度向上にもつながります。お客様が増えれば利益も出るため、さらに人材育成への投資や従業員への還元もできるでしょう。結果、従業員であるアイリストからの満足度も高まり、離職率も低く安定した利益獲得にもつながります。

以上がスクールを開校するメリットです。
例えば、サロンの数が多く、抱えているアイリストの人数も多い場合には、技術にバラつきが発生しがち。アイリスト間での技術差が大きい場合、時にはお客様から高い評価を得られるものの、また時には大きなクレームも発生するでしょう。その結果リピーターがなかなか定着せず、忙しい割には安定運営ができないという事態も起こりかねません。
そこで、目先のコストはかかるかもしれませんが、しっかりとした研修制度を作るとともに、基本的な知識を学ぶ場としてスクールを開校するとします。アイリスト全体の知識や技術力の底上げが期待できるでしょう。ぜひ検討してみてください。

開校後の課題とは

最後に、スクールを開校するための手順を簡単に紹介します。
スクールを立ち上げることになったらまず、コースやカリキュラムを設定しましょう。
それを元に教科書を作成し、内容に基づいて受講料の金額設定をします。最後にスクールをPRするためのロゴを作成し、HPを立ち上げたらあとは集客するだけ。
そう、集客しなければならないのです。
実は、この“集客”がスクール運営における難題になります。

「開業ではなく集客が難題?!」
と不思議に思われるかもしれませんね。しかし、コースやカリキュラムの立案などとは違い、集客にはお手本がありません。例えば、どのような講義を用意したらよいか分からない…と思っても、インターネットで調べてみると、数多くのお手本が見つけられるはず。あとは、自分のスクールで何に重きを置きたいかを考えながらカリキュラムを立案していけば、形になっていきます。

しかし、集客方法になると話が変わってくるでしょう。確かに、カリキュラムと同じように、インターネットを覗くとヒントはたくさん転がっています。しかし、そのヒントを元に行動を起こしたとしても、確かな結果が付いてくるとは限らない点が、集客方法の難しさなのです。
おそらくどこのスクールでも課題認識されている、集客方法。しかし、見方を変えれば、この集客方法次第で、収益確保の難しいスクール運営でも、1本の柱として運営できるほど受講生を集められるかもしれませんね。今は、SNS時代。専門学校への営業や広告媒体への掲載とともに、SNSでのPR活動も力を注いでみてはいかがでしょうか。経営者たるもの、トレンドに合わせて手法を変えていく柔軟さが、事業を成功させる肝となるでしょう。

まとめ

高い技術を持ったアイリストを育成するためのスクール開校。さまざまなメリット・デメリットがありましたね。何度も紹介した通り、スクールでの収益はあまり多くは見込めません。主力であるサロンの、補佐的な事業だと捉えておきましょう。コストももちろんかかります。人員も今より必要となるでしょう。それでもあえてスクールを開校する意味は、将来的・長期的にサロンの売り上げを拡大することにあります。スクールで訓練されたアイリストは、通常よりも早めに独り立ちできるでしょう。それも高い技術を習得しているため、早い段階で利益を出してくれるはず。つまり、即戦力の人材ということです。長い目で見たときに、安定して利益を輩出できる人材はサロンにとって不可欠。そういった意味では、スクールを開校することによるコストは、あくまで先行投資と言えます。
目先の利益だけではなく、長期的に従業員やサロンのことを考える経営者が、「想い」をもって開校するのがスクールといえるようです。
他のサロンとは違う、自分のサロンだけの強みを確立したいなら、一度スクール開校を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を読んだあなたにおすすめの関連記事

この記事をシェアする