老舗×トレンドの融合でリブランディング!株式会社松風 代表取締役 廣岡 孝繁さんへインタビュー
アイデザイナーにはおなじみのプロ専用アイラッシュブランド「松風」。「松風」を運営する「株式会社松風」は、信頼性の高い商材や技術で長きにわたってアイビューティ業界をけん引してきた老舗メーカーです。今回は、2020年に同社へ入社し、2023年11月に代表取締役に就任した廣岡 孝繁さんへインタビュー。アイビューティとの出会いや「松風」のこだわり、仕事をする上で大切にされていることなどをお伺いしました。
【経営者プロフィール】廣岡 孝繁さん
2003年 美容師として美容室入社
代表取締役 廣岡 孝繁(ひろおか たかしげ)さん
2010年2月 株式会社ビューティガレージ 大阪支社入社、チーム責任者も務める
2020年10月 株式会社松風入社 常務取締役就任
2023年11月 株式会社松風 代表取締役就任
2023年11月 一般社団法人まつ毛エクステメーカー連合会 代表理事就任
▷株式会社松風公式HPはこちら
▷まつげエクステ商材の松風公式サイト(オンラインショップ)はこちら
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―――現在の事業内容を教えてください。
「松風」では、グルーとエクステをメインとして、アイビューティ領域で使用する商材全般の製造販売、および教育サポートを行っています。教育サポートの分野では、教育機関で用いるテキストやカリキュラム作成などさまざまになりますが、裏方として関わらせていただいております。
例えば、マツエクの全国統一検定制度「Japanese Basic*(ジャパニーズベーシック)」の活動に関してもサポートとして関わっております。
*Japanese Basic…一般社団法人日本美容サロン協議会(JABS)がサポートする業界統一検定制度。業界大手の3団体、一般社団法人日本アイリスト協会(JEA)、一般社団法人日本まつ毛エクステンション認定機構(JECA)、一般社団法人NEA日本まつげエクステ協会(NEA)がライセンス管理体制を整えている。
参考:Japanese Basic公式サイト
アイビューティ業界との出会い ~新しい道への挑戦として「松風」に入社~
―――ヘア業界からアイビューティ業界へ転身されるまでの経緯をお聞かせください。
専門学校を出て美容師として美容室に就職し、6年程勤めましたが、さまざまな迷いから退職に至りました。その後、いくつかの仕事を経験しましたが、やはり美容業界で仕事がしたいという気持ちがあり、縁あって「ビューティガレージ」大阪支店に入社しました。
大阪支店から大阪支社に事業拡大する4年目にチーム責任者に就任し、10年ほど「ビューティガレージ」大阪支社に勤務しました。
―――「ビューティガレージ」への入社のきっかけを教えてください。
当時、「ビューティガレージ」は現在ほど企業規模も大きくなく、ベンチャー企業という位置づけでした。そのため自分もさまざまな事に挑戦できる環境に惹かれて入社しました。入社当初は大阪支店も人数は多くなく、さまざまな役割を担う必要があったため想像を絶する位ハードでした(笑)
ですが、役員や各部署とコミュニケーションを取れる機会も多く、仕事自体は自分自身が意見を上げたり、行動する事でさまざまな挑戦もできましたし、たくさんサポートいただける環境でした。
何よりもお客様とのコミュニケーションが一番楽しかったですね。1店舗目は初期費用もなくどうやってお店を出すか?!という状況から、2店舗名以降はすごい勢いで店舗展開していき気づいたら何十店舗も出店されて、外車で商談に来られるようになったお客様もいらっしゃいました。また、個人店でもこだわりが強い方も多く、出店後いつまでも頼ってご連絡いただける方など、さまざまなお客様を担当させていただきましたが、多くの方のストーリーに関われた事は、今でも自分自身の財産ですね。
―――続いて、「株式会社松風」に入社された経緯をお聞かせください。
2020年に「松風」が「アイラッシュガレージ(ビューティガレージグループ)」のグループなるタイミングで、「ビューティガレージ」CEOの野村と「アイラッシュガレージ」代表取締役の伊藤より「松風」への転籍を提案いただきました。ただ、「ビューティガレージ」で担当していたお客様の98%は美容室。アイビューティ業界の知識はほとんど持ち合わせておらず…。「松風」がどんな会社なのかも分かっていない状態でした。なので、初めは正直戸惑いもありましたが、人生において新しいことができるチャンスをいただけたことに感謝し、挑戦の気持ちで「松風」への転籍を決意しました。
その後、前代表の退任に伴う体制変更により、代表取締役に就任する運びとなり現在に至ります。
―――廣岡さんが思うアイビューティの魅力を教えてください。
人の第一印象は、顔の中でもまずに目で左右されます。その目元を可愛く、美しく、変化させられることは大きな魅力です。
可愛く、美しくを日常に落とし込めることがアイビューティの一番の魅力だと思っています。
何よりも繊細な技術なので、人がいることでできるビジネスというのも大きな魅力です。
また、コロナ禍を経てすごく思ったのが、いろんな事業がダメージを受けた中で美容業界も非常に苦労はしましたが、比較的早く回復することができたということです。これは、日本において美容が特別なものではなく、当たり前にあるもの、いわばライフラインのように人々の生活に密接するものということを表しているのではないでしょうか。このように、日常として“可愛くが当たり前”を提供できることがアイビューティ業界の強みかな、と考えます。
老舗ブランド「松風」のこだわり ~業界の健全化を一途に願って~
―――アイビューティ業界のメーカーの中でも、「松風」は特許を数多く取得されていることで有名です。特許はどのような目的で取得されているのでしょうか?
現在、商標33件、意匠9件、特許12件を保有しています(2024年5月時点)。これらは、業界を健全に発展させたい、業界を守りたいという思いから創業当時より特許取得を進めてきました。
特許は自社の技術や情報を守るだけでなく、新たなビジネスにつながることもあります。例えば、弊社が保有する特許の中に「まつげエクステンション用の接着強度試験方法*」があります。社内では剥離(はくり)試験と呼んでいるのですが、接着したグルーがどの程度の力で取れるのかを測るための試験で完全に自社で行っています。この特許を取得していたおかげで、オイルクレンジングを製造販売する大手メーカーから試験の依頼を受けることが実は結構あります。ドラッグストアで『マツエクOK』と書いてある商品はだいたい弊社が試験をしています。
*まつげエクステンション用の接着強度試験方法 特許番号:特許第7208760号
―――特許をたくさん取得されているのは、業界の健全化が目的だったのですね。
現在市場に出ている商品の中には、弊社の特許侵害に微妙に該当しそう。といったものも正直あります。しかし各メーカーさんが業界発展のために製造された商品である分には、こちらから提言することは、よほどのことがない限りありません。これが、「松風」はお人好しと言われる理由かもしれませんね。
―――新たにリリースされた「松風LED」においても、特許技術を用いたエビデンスデータによって接着強度を比較されていたのが印象的でした。
LEDマツエクの持続性について『なぜLEDは持続性が良いのか』を証明するために、剥離試験を行いデータ取りしました。
そして。何よりも「松風」としては『より良いものを安全に』という考えから、『お客様の安全性』はもちろん、『技術者の安全性』についても調査しました。LEDライトの光についても皆様が不安に思う事や知りたい事を「大丈夫ですよ」と自信を持って伝えれるように、公設の研究機関にてデータ取りをし、また出た数値が安全なのかも、松風基準ではなく社会的に定められている安全な指標と比較して、問題ないことを確認した上でリリースしました。
またすでにLEDマツエクを導入されている施術者の方々の意見をいろいろ聞く中で「施術者の目も守らないと!」という事になり『施術者の目を守るグラス』が準備できるまで販売は待ちました。
なお、グラスに関しては、既存品とは別で新たに8月頃に完全オリジナル製品をリリース予定です。無料で実施している「松風LED」のセミナーでも、安全性に関するデータを基にお伝えしております。少し特殊に見えるかもしれませんが、これこそが「松風」の良さであり、業界が健全に発展していくためには安全性をとことん追求する弊社のあり方は重要だろうと考えます。
―――最近では、カラーラッシュブランドNUMERO(ヌメロ)のアイデザイナーさんとのコラボも話題になっていますね。
NUMEROのコラボカラーは、アイビューティ業界を今後牽引しくれそうな方とメーカーが組んで、その方の商品を出すという新たな取り組みです。もちろんNUMEROを多く活用いただいているというのは条件にしておりますが(笑)
この企画の趣旨は、個人であるアイデザイナーがより注目され、より輝く事のきっかけにしたい!と考えから始まりました。
またこういった企画があれば、形は違えど施術者がみな自分もいろいろな事に挑戦したい!と思ってくれたらおもしろいな、と思ったのが企画のスタート。
また、NUMEROの公式インスタ(@numero_matsukaze)についても、自分もそこに載せたい、載りたいと思ってもらえるようなアカウントに育てたいなという思いから作りました。以前より運用してきた「松風」の公式インスタ(@eyelash_matsukaze)は、性質上仕方ないのですが、メーカー色が出過ぎて宣伝ページのようになってしまいがちに。そこで、アイデザイナーも一般の方も参考にできるヘアカタログのようなイメージのアカウントがあるとおもしろいよね、というところから生まれたのがNUMEROの公式インスタです。
―――エビデンスデータに基づいた老舗ブランド「松風」のイメージと、最新のトレンドをばっちり押さえたNUMEROのイメージにギャップがあるようにも思えます。
そうですね。以前の「松風」は、「昔ながらのメーカー」「老舗」というイメージが強かったと思います。やはり時代の波はありますし、変化を否定はできない。そこで、ここ3年ほどは「松風」のリブランディングに取り組んできました。いろんなプロダクトブランドができた事は良かったのですが、振り返ったときに元々あった老舗「松風」の良さを隠し過ぎるのが一番良くないな、やっぱり「松風」だよね!という考えに至りました。初心忘るべからず、ですね(笑)補足としましては、新たに生み出されたプロダクトブランドも「松風」の基準である安心・安全を基に製品化し世の中に出してますよ(笑)
ターゲットとなる施術者やお客様のほとんどが女性なので、かわいい、おしゃれを前面に打ち出すことはもちろん大事。しかし、プロ向け商材としての信頼性は必ず担保しなければなりません。そこで、現在は古き良き「松風」とトレンドを融合させたブランディングを目指しています。
この集大成が「松風LED」だと考えております。
『技術者がお客様に案内する際に重要視するのは安全性だ』という確信のもと、ブランドロゴにあえて会社の代名詞であるロゴの「松風」を冠しました。トレンド感のあるデザインでありながらも、安心して使える商材であることが一目で分かるベストなデザインになったと自負しています。
アイビューティ業界のこれから ~個を輝かせるサポートに注力~
―――アイビューティ業界に携わるにあたり、大切にしていることをお聞かせください。
以前より、技術者がもっとスポットライトを浴びていくべきだと考えています。例えば、ヘア業界では、有名なヘアアーティストのもとへ日本全国からお客様が訪れるということもあります。しかしアイビューティ業界では、まだそこまで有名な施術者は少ないと思います。ブランド力のあるアーティストを業界全体で育てていく事や、サポートをしていけたらいいなと考えています。ブランディングされつつも技術力の高いアイデザイナーが増えることで、アイデザイナーの社会的地位も向上しますし、これからの世代にもアイデザイナーを目指す人も増えてくるでしょう。
そうすれば、おのずと業界も拡大していきますし、個々の技術者が強くなれば、メーカー側もその期待に応えられる製品を提供しなくてはならない。この人たちと新しいデザインを作るためのより良い製品を開発し提供していける、という相乗効果が生まれるかな、と考えています。
―――アイビューティ業界にはどのような未来が待っているとお考えですか?
アイデザイナーは国家資格である美容師免許を持っており、首から上への施術が可能です。そのため今後は、目元だけに留まらず、施術の幅を広げて行ける業界だと思います。
Made in JAPANは終わったという人達もいますが、まだまだ海外では日本の技術や商品に対する評価は高いです。ですが、今まで通りでは時代の変化にはついていけないと思います。
これからはアイデザイナーとメーカーが組んで海外へ進出することができれば、製品だけでなく技術・デザインも併せてのMade in JAPANを提案していくことができます。そうすればビジネスの範囲が広がるため業界全体をさらに盛り上げることができるでしょう。
―――サロンオーナー、アイデザイナーに伝えたいメッセージは?
一緒にこのアイビューティ業界を楽しみたい!おもしろい事をしましょう!
「仕事」となると大変だったり、未来に不安を感じたりするかもしれません。
そう考える事は普通ですし、基本的に仕事というものは、いろいろな意味で8割型しんどい(笑)。でも、1~2割でもおもしろい・楽しいがあるだけで全然見え方が違ってくる。何か新しい事や、目指すものがあるとそれが刺激となり、必ずその先に繋がります。
アイビューティ業界はまだまだ伸びていくし、その中で行動すれば、誰もが活躍できる可能性があるおもしろい業界だと思います。ですので、どんどん前に出てきていろいろと発信してください。私達は裏方(メーカー)として、これからも皆様をちゃんとサポートできるよう、業界の未来をより良くしていけるように努めて参ります!
まとめ
「松風」入社後、約3年で代表取締役に就任された廣岡さん。「本物の目元の美とは、安全の上に成り立つ」という創業当初からの考えを引き継ぎながらも、NUMERO公式インスタや有名アーティストとのコラボ商品など、トレンド感のある新たなプロダクトも生み出し続けています。「松風」のスローガン『BETTER AND SAFER より良いものを、より安全に』のもと、廣岡さんがますますご活躍されることを編集部一同楽しみにしています。
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