業務委託とフリーランス|美容施術者が知っておくべき違いと働き方
近年増加しているフリーランス。その働き方が気になっている人も多いでしょう。業務委託とフリーランスの違いや、美容施術者がフリーランスとして働くメリット/デメリットを解説。また、働くときのポイント・注意点や仕事を獲得する方法、トラブル予防策もご紹介しているので、フリーランスとして成功したい人はチェックしてください。
【基本】業務委託とフリーランスの違い
業務委託とフリーランスは、同じものとして捉えられることも多いのですが、実は意味が異なります。まずは、それぞれの用語を理解しておきましょう。
業務委託とは
業務委託とは、企業が外部に業務を委託する契約形態を指します。業務委託では、受注する側が発注する側と契約を結び、その内容に従って業務を行ったり完成を目指したりするのが特徴です。
業務委託契約において、美容施術者はどのように働くのでしょうか?業務委託契約では、アイサロンや美容院などの委託元にある施術台や備品を使用。そこでお客様に施術を提供し、契約で取り決めた範囲で報酬を得る仕組みとなっています。
フリーランス(個人事業主)とは
フリーランス(個人事業主)とは、特定の企業に属さず、仕事の案件ごとに業務委託契約を結び仕事をする働き方の総称です。最近では「フリーランスになりたいアイデザイナー募集」「フリーランスのライター募集」といった業務委託求人を目にする機会も少なくありません。また、業務委託契約を結んでフリーランスとして働く美容施術者も増加しています。
このように、業務委託は契約形態、そしてフリーランスは働き方を指す言葉です。似てはいますが「業務委託=フリーランス・個人事業主ではない」ということは知っておきましょう。
法的位置づけの違いとは
業務委託契約に該当する契約は、民法では請負契約・委任契約・準委任契約の3つの種類に分類されます。それぞれの特徴を表にまとめたので参考にしてください。
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特徴 |
請負契約 |
・委託された業務を完成させることで報酬が発生する ・成果物を納品できなければ報酬は発生しない (例)デザイン作成・記事作成など |
委任契約 |
・委託された法律行為にあたる業務を遂行することで報酬が発生する ・業務遂行にかかる工数や作業時間で報酬が発生し、成果物の納品義務はない (例)税理士が行う確定申告など |
準委任契約 |
・委託された法律行為以外の業務を遂行することで報酬が発生する ・委任契約と同じく成果物の納品義務はない (例)美容師が行うヘアーカットやカラーリング、 |
委任契約・準委任契約の違いは、委託内容が法律行為であるかどうかです。法律行為は、法律に関する効果を発生させようという意思に基づいた行為のことで、税理士が行う確定申告などが該当します。なお、業務委託によりフリーランスの美容師が行うヘアーカットやカラーリングは、準委任契約です。
美容施術者が業務委託契約を結んでフリーランスとして働くメリット/デメリット
美容施術者がフリーランスとして業務委託契約を結んで働く場合は、以下のようなメリット/デメリットがあります。
メリット
メリットの1つが、柔軟な働き方ができること。出勤日や勤務時間などは、ライフスタイルに合わせて自分で自由に決められます。また、自分の努力次第で収入アップの可能性があることも魅力です。業務委託では、アイサロンや美容室に支払う費用以外はすべて自分の売上になります。働いた分だけ収入に直結するため、励みになるでしょう。
お客様としっかり関わりやすいことも、業務委託のメリットです。美容院では一度に複数のお客様の施術を行うこともありますが、業務委託ならマンツーマンでじっくり接客できます。得意分野の仕事のみに特化できるため、経験を重ねることでスキルアップのチャンスにもつなげられるでしょう。
デメリット
フリーランスとして業務委託契約を結んで働くときの注意点は、責任感がより必要となることです。責任の所在がはっきりしているため、業務の失敗がないようにしましょう。また、安定した収入を確保するのが難しい可能性があることもデメリットの1つです。あとで困ることないように、あらかじめ業務内容や報酬をよく確認しましょう。
美容施術者が業務委託契約によりフリーランスとして働くときのポイント
ここからは、フリーランスの美容施術者について、働き方と重要なポイントをチェックしていきましょう。
自由度の高い仕事のスタイル
フリーランスは、休みや勤務時間を自分で決めることが可能です。自由度が高いため、以下のような人に向いているといえます。
・自分のペースで働きたい
・自分の強みを活かしたい
・サロンの制約でストレスを感じている
ただし、フリーランスとして働くには、それだけの技術とセルフマネジメント能力をもっている必要があります。
顧客獲得・営業活動の重要性
シェアサロンなどで働く場合にフリーランスとして成功するには、営業活動により顧客を獲得することが重要です。美容院で働く場合は、個人で集客する必要はありません。これは、美容院側がホームページや予約サイトなどから集客しているためです。しかし、シェアサロンなどでフリーランスとして働く場合は、自分で集客しなければなりません。集客力は収入に直結します。つまり顧客獲得は、フリーランスとしてシェアサロンなどで働く際の大きな課題となるでしょう。
一方、営業まで自分でできるのはフリーランスのメリットでもあります。集客に成功すれば、収入を大幅にアップさせられる可能性もあるからです。主な営業方法については後述しますので参考にしてください。
時間管理とワークライフバランス
業務にあたる時間を自由に決められるフリーランスですが、働きすぎてしまうリスクも秘めています。仕事量が収入に直結するので、稼ぎを増やそうと頑張りすぎてしまうケースも少なくありません。やりがいをもって仕事をするのは良いことですが、自分や家庭にかける時間もしっかり確保しましょう。また、業務委託で依頼されたすべての仕事を引き受けるのは、オーバーワークの状態に陥る可能性があるのでやめたほうがいいでしょう。営業や請求事務など、本業以外にやらなければいけない作業もあるため時間管理が重要です。
フリーランスの業務委託契約時の注意点
業務委託契約はどのような点に注意したら良いのかご存知ですか?フリーランスとして働く前にチェックしておきましょう。
契約書の重要性と確認すべき項目
業務委託契約を結ぶときは、フリーランス(個人事業主)とサロン間のトラブルを避けるために、必ず契約書を作成しましょう。口頭の打ち合わせのみで仕事を受けてしまうと、トラブルが起こった際の解決が難しくなることもあります。特に「報酬」「勤務時間」「業務内容」については、忘れずに確認しましょう。
報酬や支払い条件の交渉
契約交渉時は、柔軟性のある対応が望まれます。自分の要望を押しつけてばかりでは、交渉もうまくいきません。自分の条件や最低限守りたいラインをはっきりさせ、譲れる部分と譲れない部分を決めておきましょう。
知的財産権の取り扱い
知的財産権とは、知的創造活動により生み出したものを、自分の財産として守れる権利のことです。自分が生み出したにもかかわらず、サロンがその対価を配分しない、利用を制限するなどのトラブルも確認されています。しかし、生み出した技術などは基本的にその人のものです。業務委託の目的を超えて、サロン側が無償で譲渡させることは許されません。万が一困ったときに権利を守れるよう、覚えておきましょう。
フリーランスで顧客を獲得する方法
シェアサロンや面貸しなどでフリーランスとして働く美容施術者が顧客を獲得したいときに使える、代表的な営業方法をご紹介します。
SNSの活用
最近では、SNSで写真や文章を発信して顧客を開拓する人が増えています。SNSは、基本的にお金をかけることなく情報を発信できるでしょう。
SNSを活用するときに重要なのが、ターゲットを設定すること。まずは、どのような人に向けて情報発信するのかを明確にしておきましょう。そして、数多くある投稿のなかでお客様の心をつかむためには、他の美容施術者と差別化することが大切です。自分が得意とする技術やこだわりポイント・想いなどを伝えるようにすると、お客様の心に響きやすくなります。専門用語の使用を避ける、情報を入れ込みすぎないなど、お客様目線に立った投稿を目指しましょう。
顧客からの紹介
自分が担当するお客様に、家族や友人を紹介してもらうのも1つの手。この方法も、コストをかけずに集客可能です。知っている人からの紹介は、信用を得やすいもの。家族や友人に紹介してもらえるよう、担当しているお客様に真摯に向き合いましょう。
業務委託・フリーランスに関する最新の法律や制度
業務委託・フリーランスに関連する法律や制度も、チェックしておきましょう。
フリーランス法について
フリーランスとして仕事をするときは、2024年11月にスタートしたフリーランス法についても知っておく必要があります。フリーランス法は、業務を委託する企業を規制する法律です。フリーランス法には、取引の適正化や就業環境の整備に関する内容が記載されています。安心して働ける環境を整えるための法律があるのは心強いですね。
社会保険や税金の取り扱い
フリーランスで働く場合、厚生年金には加入できません。国民年金や国民健康保険などの加入手続きを自分で行う必要があるため注意しましょう。基本的には国民年金のみとなるため、年金受給額は会社員として働くよりも少なくなります。将来に備えたい場合は、フリーランスでも加入できる組合保険などを検討するのも1つの手です。
また、業務委託でフリーランス・個人事業主が働く場合の報酬は事業所得となるため、開業届を税務署に提出する必要があります。毎年自分で所得税を計算して、確定申告を行いましょう。業務委託で働くフリーランス・個人事業主は、業務上の出費を経費として計上しないと、不必要な税金を払うことになりかねません。領収書はこまめに管理しましょう。
なお、確定申告時に年間課税売上が1,000万円を超える場合は、翌年から消費税納税の義務がある課税事業者となります。このケースでは、業務委託のフリーランス・個人事業主もインボイス発行事業者としての手続きが必要です。
トラブル時の予防策と相談窓口
フリーランスが直面しやすいトラブルと予防策を、以下にまとめました。
【トラブルの例】
・報酬が支払われない、引き下げられた
・契約を一方的に切られた
・記憶のない過失により損害賠償を請求された
【予防策】
・信用できるサロンのみと取引する
・契約前に条件や業務内容を確認する
・契約書を交わす
・フリーランス向けの保険を検討する
業務委託契約のもとに働くフリーランス・個人事業主がトラブルに巻き込まれた場合の相談窓口もご紹介します。
【相談窓口】
・下請かけこみ寺(公益財団法人全国中小企業振興機関協会)
・公益財団法人日本税務研究センター
・フリーランス・トラブル110番(第二東京弁護士会)
・法テラス(日本司法支援センター)など
美容施術者が業務委託やフリーランスを選ぶ際のポイント
最後に、美容施術者がフリーランスを選ぶときのポイントを3つご紹介します。
自分のキャリアプランと合っているか
まずは「トップスタイリストを目指したい」「自分のお店をもちたい」など、今後の方向性をはっきりさせるのがおすすめです。そして、キャリアプランに合った自分らしい働き方やサロンを選びましょう。
自分のスキルと市場ニーズが合っているか
自分のスキルが市場ニーズにマッチしているかということも、大切なポイント。お客様が求めるのは、スキルが高い美容施術者です。スキルがなければ、いくら人柄が良くてもリピーターを獲得するのは難しいでしょう。近年では、美容師の資格をもちながらアイデザイナーやネイリストなどとして活躍する人も増えています。仕事の幅を増やして、得意分野を見つけるのもおすすめです。
経済的な安定性や成長機会が見込めるか
フリーランスになる前には、経済的に安定しそうかどうかもよく検討しましょう。シェアサロンなどで働く場合は、SNSなどを通して新規のお客様を獲得する努力が求められます。
そのためシェアサロンなどで働くフリーランスは、顧客管理などのビジネススキルの向上が可能。同時に、施術スキルや接客スキルを磨けそうかも考えてみてくださいね。
まとめ
業務委託とフリーランスの違いや、フリーランスとして働くときのポイント・注意点をご紹介しました。自由度が高いフリーランスとしての働き方は、魅力ですよね。シェアサロンなどでフリーランスとして働くためには、SNSの活用や担当している顧客からの紹介などにより新規のお客様を獲得する必要があります。そして、常に新しい情報を仕入れて技術を高めることが成功につながっていくでしょう。
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