まつげ美容液とまつげ育毛剤の違いとは。最近の危害報道と薬機法・広告表現について知っておこう

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2019年8月8日、国民生活センターより「まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-」が発表されました。当報道の事の発端は、まつげ美容液の使用による健康被害の報告件数が急増したこと。まつげ美容液をお客様に販売する立場であるアイリストにとって、「知らなかった」「あまり理解できなかった」では済まされない重要な内容が盛り込まれています。そこで今回は、当報道の内容を分かりやすく解説し、お客様を健康被害から守るためのポイントや広告表現についてまとめました。

国民生活センターによる報道まとめ

この度、「独立行政法人国民生活センター」より2019年8月8日付けで『まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-』が発表されました。では、まず今回の報道について、詳しく解説してきましょう。

現在、日本には医薬部外品として承認されたまつげ美容液は存在しない

化粧品と医薬部外品とでは、効能・効果についての広告表現の範囲に違いがあることを知っていますか?商品に表示されている表現について例をあげると、

  • まつげにハリ・ツヤ・コシを与える…化粧品・医薬部外品ともにOK!
  • 育毛効果がある・発毛を促す…化粧品はNG!医薬部外品ならOK!


上記のとおり、医薬部外品でなければ、“まつげの育毛(まつ育)効果がある”ことを表す文言を商品に表示することはできません。しかし、実は2019年10月7月末現在、日本には医薬部外品として承認されたまつげ美容液はひとつもありません。とはいえ、育毛効果のあるまつげ美容液を使ったことや見たことがあるという方も多いのではないでしょうか?実際に国民生活センターの調査によっても、育毛効果を期待させるような表示がなされたまつげ美容液が販売されていることが確認されています。また中には、頭髪への使用を想定して医薬部外品の承認を得た育毛剤が、まつげ美容液として販売されている心配なケースもあったそうです

まつげ美容液による危害情報の概要

国民生活センターには、2015年4月1日~2019年5月31日の期間で381件のまつげ美容液による危害情報が寄せられました。この危害情報の件数は、化粧品全体に寄せられた危害情報の約15%という大きな割合を占めています。また被害を受けた方のほとんどは女性で、そのうちの約80%が40~60歳代の方でした。

参照:独立行政法人国民生活センター「まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-」

また危害の程度をみると、「医者にかからず」が約80%を占めていましたが、中には治療に1ヶ月以上もの期間を要したケースもありました。

健康被害の事例紹介

国民生活センターに報告のあったまつげ美容液の使用に関する健康被害の事例をご紹介します。
※以下、国民生活センター「まつ毛美容液による危害が急増!-効能等表示の調査もあわせて実施-」の一部を抜き出して転載。

ケース1:角膜潰瘍を起こし、手術を要した

スーパー内の化粧品コーナーでまつげ美容液を試し、購入。
帰宅後、しばらくして視界がぼやけてきて痛みが出てきた。
その後、眼科を受診したところ、角膜潰瘍を起こし眼球の表面がただれているといわれた。すぐに手術を行い、その後も投薬治療を継続した。(2019年3月、50歳代・女性)

ケース2:目の周りが腫れて皮膚科を受診

ネット通販で、まつげ美容液を購入。
使い始めは問題なかったが、10日ほど経つと目の周りが腫れてきたため皮膚科を受診。アレルギーと診断された。(2018年11月、60歳代・女性)

ケース3:両まぶたが腫れ、医師に塗布薬を処方された

ネット通販でまつげ美容液を定期購入。
使い始めてから2ヶ月後、ヒリヒリとした刺激感があり両まぶたが腫れてきたため、病院を受診したところ、アレルギーと診断された。
1週間ほど塗布薬を塗り完治した。(2018年10月、40歳代・女性)

ケース4:まつげを長く濃くするという効果がなく、目の周りも腫れてきている

まつげを長く濃くするという美容液を、スマホで購入。
使用説明書のとおり1日1回まつげの付け根部分とまつげに塗っている。
広告には1ヶ月くらいで効果が出てくるとあるが、全く効果が無い。
また、当美容液が原因なのかは不明だが目の周りが腫れてきている。 (受付年月:2019年1月、60歳代・女性)

ケース5:目のかゆみやまつげが抜けるなどの症状が現れた

ネット通販でまつげ美容液を購入。
使い始めから、目のかゆみやまつげが抜けるなどの症状が現れた。(受付年月:2018年5月、30歳代、女性)

まつげ美容液に関する危害情報には、健康被害の他にも、定期コースが解約できない、電話が繋がらないなどの販売業者とのトラブルも多数報告されているようです。

当報道のまとめ

  • まつげ美容液による危害情報が381件報告された(2015年4月1日~2019年5月31日)
  • 医薬部外品として承認されたまつげ美容液はひとつもない!(2019年7月末時点)
  • 化粧品であるまつげ美容液は“育毛”の効果を謳うことはできない
  • まつげ美容液の中には化粧品の効能の範囲を超える広告表示がされているものがある
  • 頭髪への使用を想定した医薬部外品の育毛剤をまつげ美容液として販売しているものがある
  • まつげ美容液による危害は、“皮膚障害”が全体の約80%を占めていた

サロンでのまつげ美容液販売で注意すべきこと

当報道の健康危害の事例を見ても分かるとおり、まつげ美容液はスーバーやショッピングモールなどの身近な店舗や通販サイトなどでも、簡単に購入することができます。その手軽さゆえ、肌に使う化粧品と同じような感覚で試したり、使ったりする方が多いようです。確かに、化粧品であることに違いありませんが、まつげ美容液の使用部位がまつげや目の周りということは注意すべきポイントといえるでしょう。

ご存知のとおり、目の周りは皮膚が薄く、外部からの物質が経皮吸収される率も高いといわれています。特に粘膜は刺激に敏感な部位ですよね。そのため、以下のような条件下でまつげ美容液を使用すると、刺激を感じたり、アレルギー症状を引き起こしたりする恐れがあります。

  • 秋から春にかけての乾燥する時期の使用
  • 植物由来成分(オタネニンジン根エキス、ナツメ果実エキス、センブリエキスなど)が配合されたもの
  • エタノールなどのアルコール類が配合されたもの など


これらの成分は、化粧品などによく用いられるありふれた物質です。しかし、まつげや目の周りという敏感な部位に使用することにより健康被害を引き起こす可能性があることを理解することが大切です!

上記より、サロンでまつげ美容液を販売するにあたって、お客様を健康被害から守るためにお伝えしたい注意ポイントをまとめました。

ポイント
  • 目の周りに使用するため、危険性の低い成分であっても刺激を感じる場合がある
  • まつげ美容液が目の中に入らないよう注意する
  • かぶれや腫れなどを感じたら、すぐに使用を中止する
  • 症状の改善が見られなければ、すぐに医療機関を受診する など


またサロンで販売するまつげ美容液については、配合されている成分や使用方法などをしっかりと把握しておきましょう。成分や製造元の信頼感を知った上で、「医薬部外品の頭髪用育毛剤をまつげ美容液として販売する商品」をサロンで取り扱うのはやめましょう。

まつげ美容液(化粧品)の広告表現は法律で定められた範囲を超えてはいけない!

前述のとおり、現段階でまつげ美容液として販売される全ての商品は化粧品にカテゴライズされます。そのため効能などの表現については、平成23年7月21日薬食発第0721第1号医薬食品局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」に定める範囲を超えてはならないと決められています。

では、医薬部外品と化粧品において、表示が許されている表現を具体的にご紹介しましょう。ちなみに、化粧品についてはまつげ美容液に関連するワードのみ抜粋しました。

医薬部外品の効能・効果の範囲

育毛剤(養毛剤)…育毛、薄毛、かゆみ、脱毛の予防、毛生促進、発毛促進、ふけ、病後・産後の脱毛、養毛

承認を要しない化粧品の効能の範囲

  • 毛髪にハリ、コシ、うるおい、ツヤを与える
  • 毛髪をしなやかにする
  • 毛髪の水分、油分を補い保つ
  • 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ
  • (汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする
  • 皮膚にうるおいを与える
  • 皮膚の水分、油分を補い保つ
  • 皮膚の柔軟性を保つ
  • 皮膚の乾燥を防ぐ
  • 皮膚を保護する
  • 肌にハリ、ツヤを与える など

このように、化粧品であるまつげ美容液は、育毛効果や発毛を促すような表現はできません。これまで、まつげ美容液を販売する際に「まつ育効果がありますよ!」「まつげが生えやすくなります」「まつげの量が増えます」などとお客様にお伝えしたことはないでしょうか。トラブル防止のためにも、誇大広告にならないよう十分に注意しましょう。

まとめ

今回、国民生活センターより発表された報道内容は、マツエク業界に携わる全てのスタッフが正しく理解し、日々の業務に反映しなければならないものです。この機会に、店売品のまつげ美容液に付けているPOPの内容や商品をPRするときに使っている文言などが化粧品の広告としてふさわしいものなのかを見直してみましょう。また今回の報道について、お客様から質問を受けることもあるかもしれません。その際には、正しい情報を提供できるよう報道内容の情報をきちんと整理しておくことが大切です。191010Euk

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