施術直後の入浴がNGの本当の理由!マツエクのグルーの「2段階硬化」の原理を理解しよう
“グルーの硬化”はマツエク施術の根幹ともいうべき重要な現象ですよね。日々目の当たりにしているグルーの硬化現象ですが、「なぜ、グルーは固まるの?具体的にどんな風に固まるの?」という質問にすんなり答えられる人は少ないのではないでしょうか。今回はグルーの硬化を「中期硬化」と「完全硬化」の2段階に分けて詳しく解説します。
施術してすぐの入浴はNG!
「マツエク施術後、〇時間は入浴を控えてください。」
施術から入浴OKになるまでの時間は使用するグルーによってさまざまですが、カウンセリング時やお帰りの際、お客様にお伝えするおなじみの言葉ですよね。
しかしこの注意喚起の言葉には、どのような意味があるのでしょうか。施術後のマツエクを見ても、エクステは自まつげにしっかりと接着され、グルーが固まっていないようには思えません。それなのに、一体なぜ時間を空けなければならないのでしょうか。
この理由を理解するためには、グルーの硬化を「中期硬化」と「完全硬化」の2つの段階に分けて考える
ことがポイントです。
グルーはまつげや空気中の水分と反応して固まる
ご存知のとおり、マツエク用グルーの主成分はシアノアクリレートという物質です。このシアノアクリレートは一般的な瞬間接着剤の主原料として、多く製品に使われています。では、シアノアクリレートが硬化する仕組みを説明しましょう。
液体の状態のシアノアクリレートは、「シアノアクリレートモノマー」という分子からなります。このシアノアクリレートモノマーは空気中やくっつけたいものの表面にある水分と反応することにより、秒単位で重合(じゅうごう)という化学反応を開始し、硬化して接着します。
【難しい言葉の解説】
モノマー…“モノ”はギリシャ語で“1”を表す言葉。1つの分子。
重合…2つ以上の分子がつながって、元のものより分子量の大きい化合物を作ること。(グルーの取り扱い説明書でも使われることがあるので覚えておきましょう。)
このようにシアノアクリレートは自まつげやエクステの表面や空気中に存在するわずかな水分と反応して、瞬時に硬化していきます。ここで重要なポイントは、硬化は水分と反応している表面部分から徐々進んでいくということです。そのため施術直後はグルー表面と中心部分とでは硬化の程度が異なるのです。
中期硬化の段階で多量の水分に触れるのはNG!
硬化の仕組みがわかると、冒頭で登場した「中期硬化」と「完全硬化」の意味も察しがつきますよね!グルーが完全に乾くまでの間に、グルーのまわりに大量の水分を付けてしまうとグルー表面のみが必要以上に速くガッチリと固まってしまいます。すると、グルー内部が水分と触れることができなくなり中身は乾かない。つまり強火で焼いたお肉のように周りは焦げているけど、中身は生焼け。という状態になってしまうのです!
中期硬化=グルーの表面部分が硬化する時間であり、中心部分の硬化はまだ不十分な状態。
完全硬化=グルーの中心部分まで完全に硬化した状態。
このようにグルーの硬化には2つの段階があり、入浴などにより中期硬化の段階で多量の水分に触れてしまうことは、マツエクのモチに大きく影響すると考えられます。
<主なデメリット>
- 白化現象が起こる場合がある
- グルーの揮発成分(ホルムアルデヒド)の放出量が増え、目にしみる・涙が出るなどの症状がみられる場合がある
- グルーの接着力が弱まるなど
特に涙が出る・目にしみるなど、お客様の健康を害する事態は絶対に避けなければいけません。これが施術してすぐ(中期硬化の段階)に入浴をしてはいけない理由なのです。
▼グルーについてまとめた過去記事も参考にしてください。
完全硬化までの時間が短縮されたグルーも登場
グルーは完全硬化すると強力に接着されるため、入浴ももちろんOKです。しかし仕事終わりに来店されるなど、遅い時間にマツエクの施術を受けたお客様の場合、完全硬化に至っていないことを理由に入浴や洗顔などをせずに就寝するというケースもあるでしょう。「一晩、洗わないくらいなんてことない。大丈夫!」と思いますよね。しかしマツエク施術後の目のまわりには、ホコリや皮脂などの一般的な汚れ以外の余計なものが付着している場合があるようです。
シアノアクリレートの蒸気が付着する可能性
「完全硬化まで待てないから、今日は洗わずに寝ちゃおう。」
一見この対応は、グルーにストレスを与えない最善の選択のように思えます。しかし、実は肌にとってはあまり好ましくありません。なぜなら肉眼では確認できないシアノアクリレートの蒸気が目のまわりに付着している可能性があるからなのです。
では、こちらの画像をご覧ください。普段、グループレートにグルーそのものとは違う“得体の知れない白いカス”のようなものがついていることはありませんか?
実はシアノアクリレートは硬化する過程で一部が蒸発する場合があります。そしてその蒸発したシアノアクリレートは、空気中の水分と反応すると重合が起こり、シアノアクリレートの蒸気が生成されます。この蒸気がグループレートに付着し、空気に流動性がなかったりするとそのまま留まり続けてしまうのです。結果、局所的に白い粉をふいた状態となったものなんだそう。またシアノアクリレートの蒸気は肉眼では確認できませんが、目のまわりなどに付着する場合もあります。
シアノアクリレートが蒸発する程度は施術空間の環境により異なるため、施術によって常に目のまわりにシアノアクリレートの蒸気が付着するわけではありません。またシアノアクリレートの蒸気が身体に悪影響を及ぼす可能性も低いと考えられますが、肌にとって不要なものであることに疑いの余地はないでしょう。
以上の理由からグルーの完全硬化後には早い段階で入浴や洗顔などを行い、目のまわりを清潔にすることをおすすめしたいのです。
※上部の画像は視認性を高めるため、グループレートにグルーを近付けシアノアクリレートの蒸気が残留しやすい条件で撮影したものです。
完全硬化まで1時間!超速乾グルーを活用するのも手
「遅い時間に施術を受けた」という以外の理由でも、「施術後の入浴・洗顔の制限により、不便さを感じた経験がある」というお客様やアイリスト自身も多いのではないでしょうか。そんなお客様ニーズに対応するためにはサロンで「速乾タイプのグルー」を選択することもひとつのアイデアです。
最近では、最後のエクステをまつげに装着してから約5分で中期硬化が完了し、約1時間という短時間で完全硬化が完了するという超速乾タイプのグルーも登場しています。
グルーの説明書にも「施術直後から1時間経過時点でクレンジング・洗顔が可能です」と明記されています。このように短時間で完全硬化するグルーであれば、いくら遅い時間に施術を行ったお客様であっても、ご帰宅後に安心して入浴や洗顔をしていただけそうですね。
ただし超速乾タイプのグルーは硬化速度が速いため、装着スピードが遅く、グルーの塗布量のコントロールが難しい施術者には向いていません。超速乾タイプのグルーは正確かつスピーディな装着技術を持った上級者向けのアイテムといえます。
おすすめの超速乾タイプグルー
松風:ギプスグルー「GIPS GLUE」画像元:松風
中期硬化…約5分
完全硬化…約60分
約60分で完全硬化することをマツエク用グルーの剥離強度試験においてしっかりと確認された信頼の商品です。限られた時間での多くの施術をこなしたいという上級施術者からのリクエストにより開発されました。
はまざき:GTパワースピーダー画像元:はまざき
中期硬化…不明
完全硬化…3時間
約3時間で完全硬化!さらに継続期間がメーカートップクラスの約5~6週間とモチのよさまで満足の上級者用グルーです。また適度な粘度があるため、操作性がよいと好評です。
▼グルーについてまとめた過去記事も参考にしてください。
完全硬化という観点をしっかりとチェックすることが大切
完全硬化までの時間はグルーによって異なります。また「まつれん(社団法人日本まつげエクステメ-カ-連合会)」が定める安全性向上のための条件を満たした基準適合品であっても、完全硬化までの時間を明記していないグルーもあるようです。
しかしながら現在日本で販売されているマツエク用グルーのほとんどはシアノアクリレートを主成分としているため、グルーによって硬化スピードに差はあれども「2段階硬化(中期硬化→完全硬化)」の原理に変わりはありません。
このグルー硬化の仕組みを知ることにより、なぜ完全硬化前の入浴がNGなのかがよくわかります。そのためお客様に「マツエク施術後、〇時間は入浴を控えてください。」とお伝えするときにも、お客様が“なぜ?”と感じていることを意識した伝え方ができると親切でしょう。例えば…
「施術後のグルーは、固まっているように見えても中心部分は固まっていないので、…」
「グルーの中心が固まりきる前に濡れてしまうと、グルーが白く変色してしまう場合があるので、…」
このように伝えるのが良いでしょう。
また完全硬化までの時間の記載がないグルーの場合には、施術後最低5時間は入浴を控えるようお声かけすると安心です!
▼グルーについてまとめた過去記事も参考にしてください。
まとめ
今回はグルーの2段階硬化について詳しく解説しました。完全硬化までは入浴NG、そして完全硬化以降はなるべく入浴・洗顔し、目元に付着した不要なものを洗い落とすことがおすすめです。また化学技術は日進月歩。完全硬化までの時間が短縮された超速乾グルーも続々と登場しています。お客様のニーズ・アイリストの施術技術に合わせたグルーを選択して、顧客満足度のアップを心掛けましょう。190327Euk