アイ業界の担い手、マツエクとヘアの兼任美容師の輩出に尽力!中村由佳理氏へインタビュー
ファンを作らなくても装着可能な「ESラッシュ」でおなじみの「株式会社WINK」代表取締役、中村由佳理氏にインタビュー。マツエク商材メーカーの経営のほか、ヘアとまつげの両方の施術を行う“二刀流の美容師”(兼任美容師)の育成にも力を注がれています。ヘアサロンで働く美容師がマツエクの技術を習得することは、そのサロンに関わる全ての人にメリットが!さらに、兼任美容師を輩出することは今後のアイ業界全体を支えることにも繋がるそう。その意味を詳しくお伺いしました。
経営者プロフィール&現在の事業内容
中村 由佳理(なかむら ゆかり)さん
株式会社 EYE STUDIO・株式会社WINK 代表取締役
EYE STUDIOプロフェッショナルスクール理事長
アジアアイラッシュ協会理事
大阪府出身、10月28日生まれ。NRB日本理容美容専門学校卒業。京都府を中心に「美容室NOISM(ノイズ)」などを展開する、「株式会社On(オン)」の設立に参加。代表取締役は、夫の中村芳進(よしのぶ)さん。その後、同社のアイラッシュ技術開発・事業発足に尽力する。2016年2月、「株式会社EYE STUDIO(アイスタジオ)」を設立、代表取締役に就任。2017年NEECまつげエクステコンテスト優勝。若手美容師の早期戦力化、投資に対して十分な生産性を担保できる美容室メニューとしてのアイラッシュ理論・技術を独自に構築し、全国の大手サロンを中心に講習を請け負っている。
2018年9月に、マツエク商材メーカー「株式会社WINK(ウィンク)」を設立し、代表取締役に就任。同社では、ファンを作らずに装着できるボリュームラッシュ「ESラッシュ」やグルーなどの商品開発・販売を行う。
現在の事業内容を教えてください。
現在、ヘアサロン9店舗、マツエク専用サロン1店舗。2022年2月にマツエク専用サロンをもう1店舗オープン予定です。株式会社EYE STUDIOでサロン運営を、株式会社WINKでは主にマツエク商材の開発・販売と講習業を行っています。
現在、施術からは退いており、社内教育はもちろんのこと、外部講習を請け負っています。美容師さんが行うマツエク講習を行っており、マツエクの施術ができない方を14日間で施術ができ、デビューが可能になるというカリキュラムが1番人気です。弊社は特殊なサロンで、専任のアイラッシュ施術者を雇わず、美容師に入社してすぐに14日間のマツエク講習を受講。デビューと同時に配属させるという体制で運営しています。ヘアアシスタントがマツエク施術を行うことで、トータルビューティーの提供を可能にしています。
また、マツエクの施術に性別は問いません。スタッフ全員がマツエクの施術ができる、つまりヘアとマツエクの兼任制、二刀流で売り上げを上げていくことが狙いです。美容室がアイラッシュ施術者を雇わなければならないというネックを解消するとともに、美容師にアイを担当させながら、どのようにサロンを運営していけばよいのか、という講習を行っています。
同時に、兼任美容師たちが使いやすいアイ商材の開発と販売にも力を入れています。100本を6分で装着するという最速記録の世界ギネスを取得していることで、社名を知っていただいている方も多いようです。
マツエクとの出会いが、今につながる新規事業のきっかけに
どのような経緯で、マツエクに関する事業をはじめられたのでしょうか?
美容学校を卒業し、大手の美容ヘアサロンに就職。そこで現在の夫と出会いました。その後結婚し、第一子出産を機に美容師を休業しました。そして、ちょうど10年前、夫の独立に合わせて美容師に復帰。10年間は、専業主婦をしていたんです。復帰後、ヘアアーティストとして仕事をしていたのですが、サロンに入社したあるスタッフの「マツエクもやってみたい」という言葉をきっかけに、そのスタッフと一緒にマツエクを習いに行ったのがはじまりです。
大手マツエクメーカーさんの講習を受けたんですが、やはりマツエク専門店に向けたカリキュラムで、自身の美容師としての経験を重ねたときに、この方法だとマツエク専任の人を雇わないとトータルではやっていけないな、でも私は自分で施術をしたい…マツエク専門でやっている人たちとは観点が違うのかもしれない、と思いました。
また当時、マツエクメニューを導入してはみたものの、施術者の技術不足によるクレームだらけ、という点も。だからこそ、当時の講習では美容師がアイラッシュの施術をすることはなかなかに難しい点も多く、トータルビューティーを目指すのであれば、アイラッシュ施術者を専任で雇わなければ、というのが業界全体の流れだったと思います。
そこで、どうしたらヘアのトリートメントをする感覚でマツエク施術ができるか、スタッフ全員がマツエクの施術をできるようになるか、アイ専任ではなく兼任制を可能にできるか、という点を考察し、カリキュラムや商材を自分流にアレンジしていったんです。
すると、また新たな疑問が生まれました。
・なぜアイラッシュ施術者に男性はいないのか(当時)
・ヘアは1人のお客様に対し、複数人で施術をするのに、マツエクはなぜ1人だけで施術するのか
・ヘアのスタイルブックは写真なのに、なぜマツエクのデザインイメージはイラストばかりなのか
・なぜ施術に1時間もかかるのか
・マツエクの施術は正しい方法を習得さえすれば、美容師なら誰にでも容易に行える技術なのに、なぜ専任制が主流なのか などです。
そこで、サロンの美容師に対し、高い教育を短期間で教え、いかにマツエクの施術をさせるか、という点を突き詰めました。すると、うちのサロンでは、顧客の来店状況に合わせてマツエクの施術を途中交代する、つまり施術を複数の美容師でかけ持ったり、マツエク用のベッドの空きがなくシャンプー台を使ってマツエクを付け出したり、といった新たな環境が生まれたんです。
結果、1ベッド100万ですごいといわれていた時代に、1店舗7ベッドでまつげだけで1,400万の月売りが上がり、このやり方なら勝つな!と、実感できるまでに至りました。
アイとヘアでトータルビューティーを叶える兼任美容師をサポート
まつげだけで1ベッド200万とは、本当にものすごい数字ですね!
そうですね。さらに、注目して欲しいのは、マツエク専任の施術者を雇っていない、ということなんです。サロンのアシスタントがヘアとマツエクを兼任するため、メニューは増えていますが、新たな人件費は発生していません。また、スタッフはさまざまな作業を兼務しているため、必然的に施術スピードが上がるんです。すると、お客様は速い・上手い・安いで喜ばれる。スタッフも、短時間で施術が行えるため目の負担が軽減され、施術を簡単に行えるようになる、するとスタッフもマツエク施術が好きになるという好循環が生まれます。売り上げが上がって、お店もうれしい。つまりまつげは、お客様・施術者・お店の三方全てに良いこと尽くしでした。
自サロンでの兼任制導入に成功したのち、外部への講習業は、いつごろから始められたのでしょうか?
ヘアもアイをトータルで習えるサロンとして注目され、今から3、4年前くらいに外部からの講習依頼が続々と舞い込むようになりました。現在は、全国各地約2,000人の方に講習を受けていただいています。生徒さんのほとんどは美容師さんです。
またヘア・アイに限らず、美容師はお客様の「キレイ」をサポートする仕事。だから私の講習では、技術はもちろん、デザインの方法やカウンセリング、集客の方法まできっちり教えます。
アイラッシュ施術者を雇わずに、アシスタントや美容師さんにマツエクの施術を担当させるという、それまでのまつげ業界にはなかったやり方に賛同いただけ、たくさんのお仕事をさせていただいていている状況です。講師である私自身がサロンオーナーかつ美容師であり、美容師が育てる美容師が施術をするマツエクということが最大の売りです。
中村さんの講習では、技術のほか、カウンセリングやデザインのことも教えるとのことですが、講習はたったの14日間。具体的には、どのような内容になっているのでしょうか。
私の講習は、技術が9.5割。残りで座学を行います。座学では、集客の方法、売上を上げられるスタッフの育て方などを教えます。いくら技術が身に付いても、それを売上に変えられなければ意味がありません。そのため、アフター講習(技術見直し講習)も6回行います。デビューしたら終わりではなく、デビューした後までフォローするサポート体制を取っています
また、講師陣が兼任制の施術を行っている現役施術者であることも大きな特徴です。経験豊富な現役施術者なので、生徒さんにとってもすぐに役立つアドバイスをすることができます。
働きたいと思える「美容師」という職を作りたい
新人の美容師というと、まだ世間では給料が安い・下積みが長いなどのネガティブなイメージがありますが、中村さんが提唱するアイとヘアの兼任制を取り入れれば、その問題が解決できるということでしょうか。
そうですね。兼任制を導入すれば早くデビューできて、美容師1年生でもお客様がつくんです。お客さんがつくと、美容師の仕事はより楽しくなりますよね。通常のアシスタント業務よりも、断然楽しいことが増えるんですから。売上の面でも、ヘアにデビューするときには、すでにまつげのお客様を持っている状態なので、3年目で3桁の売り上げを叶えるスタッフも大勢います。若い世代は、できることは好き、苦手なことは嫌いという人が多いんです。だからこそ、アイラッシュの施術を好きになってもらうことは大変重要だと思っています。いかに、簡単だと思わせて好きになってもらうかは、講習業でも大切にしています。
また、美容経験がほぼゼロの人やブランクの長い人、子育て中など、現場復帰が難しいと考えている休業美容師の人にとって、1年間アイスクールに通うということって本当に難しいことですよね。でもたった14日の講習なら、がんばれると思うんです。早期デビューを可能にすることは、働きたいのに働けない休業美容師を助けることにも繋がると考えています。
アイ業界を発展させるにあたって1番大事なのは担い手である施術者を増やすこと。まつげを付ける人がいなくなっては、業界は成り立たなくなってしまいます。しかし現状、全美容師のうち、まつげを付けられるのは数%。だからこそ、マツエクを付けられる美容師が増えれば、アイ業界のよりよい発展につながるのでは、と感じています。
兼任美容師の中にはアイラッシュの施術が楽しくなり、マツエク専門サロンに移るという人も。それも結果としてアイ業界の発展につながる、大変喜ばしいことだと思います。弊社では、そのためにマツエク専門サロンという別の環境も用意しています。
現在の私の夢は、1万人のアイラッシュ施術者を作ること!今44歳ですが、60歳くらいまでにこの夢を叶えたいと思っています。
時代を映す“声”に耳を傾ける経営者であり続けたい
今後の美容業界・アイ業界は、どのように進んでいくべきだとお考えですか?
目元は、老いや加齢を1番感じるパーツですよね。だからこそ、美容院でトリートメントすつような感覚でマツエクが装着できる、それぐらい身近なものになれば、アイ業界はもっと発展すると考えています。
施術者に関していうと、残念ながら最近は、美容師になりたい人が減っているのが現状。美容師という仕事は男女差がなく、女性でも稼げる職業のはず。しかしながら、土日勤務や長時間労働など、今の時代に合わない点があることも事実。「土日は働きたくない、ラクして稼ぎたい」という方もいますよね。しかし経営者としては、若いスタッフの考え方を無下にするのではなく、その考え方をどう生かすか、ということも大切だと思っています。答えは、いつも現場で働くスタッフたちの声にあるんです。スタッフが働きたいお店を作ること、働くスタッフの立場に立ち、柔軟に環境を変化させることが今後の美容業界・アイ業界の課題であり、そうなっていきたいと思っています。
お仕事をされるうえで、中村さんが1番大切にされていることはなんですか?
やはり、働いてくれるスタッフにどれだけ寄り添えるか、働きやすい環境を作ってあげられるか、スタッフがやりたいことをやらせてあげられるかが全てですかね。私も主人も臨機応変に対応し、スタッフの声に耳を傾け続けてきました。柔軟性と教育に力を大切にしています。
そして、もちろん現場スタッフの向こうにはお客様がいらっしゃいます。現場のスタッフの声=お客様のご要望ということでもあります。美容業界は「人」ありきで成り立つ業界だからこそ、時代の流れをキャッチするために、現場のスタッフの声をきちんと拾い上げ、反映させていきたいと考えています。
まとめ
ヘアとアイの兼任制は、若いうちは給料が安い・下積み期間が長い・ブランクがあると現役復帰するのが難しいなど、美容師ならではの問題を解決できる優れたシステムということがよくわかりました。時代やお客様の要望を映す若いスタッフの声に耳を傾け、柔軟に対応し、環境づくりをしてきた中村さんだからこそ、美容師の“二刀流”というこれまでにない斬新な考え方を生み出せたのでしょう。60歳までに1万人のアイラッシュ施術者を輩出するという夢が実現される日を心待ちにしています。211217Euk
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