質を重視した商材と考える力のある施術者の育成により業界の未来に真摯に向き合う|『株式会社A-Plus』代表永井麗氏インタビュー
今回お話をお伺いしたのは、アイラッシュサロンの運営とアイラッシュ商材メーカー、そしてスクール運営を行う、株式会社A-Plusの代表取締役社長を務める永井麗さん。もともと歯科技工士を経験していた永井さんがアイラッシュ業界に携わるようになったきっかけから、商材開発に至った理由、そしてアイラッシュ施術者の教育にかける想いなど、詳しく教えてもらいました。
【経営者プロフィール】永井麗さんとは
大阪大学卒業後、歯科技工士として働いたのち、妊娠を機に退職。出産後、子育てをしながら派遣の事務員として勤務しているときにマツエクに出会い、 株式会社A-Plus を創業し2007年7月に大阪江坂にマツエクサロンをオープン。2013年6月にマツエク商材メーカーとしてネットショップをスタート。2022年2月現在10店舗のマツエクサロン運営とマツエク商材の企画・開発・製造販売、アイラッシュ施術者の技術指導をするスクール運営をしている。各事業の概要は以下の通り。
◆アイラッシュサロン経営(2022年2月現在10店舗)
Angelic
Reylash
◆アイラッシュ商材開発・販売
Angelic(オンラインショップ)
◆アイラッシュスクール運営
◆美容サロン開業コンサルタント
永井さんがアイラッシュ業界に興味を持ったきっかけは?
アイラッシュサロンを始めた経緯を教えてください。
マツエクに携わる前は子育てをしながら派遣社員の事務として働いていたのですが、漠然といつか何か事業がしたいとは考えていました。経営者である父に昔から「いつかは自分で事業をしなさい」と言われていたこともあり、弟と妹と3人で何か事業ができたらとは思っていたんです。そんなとき妹に「こんな技術があるんだよ、手先が器用だから向いているんじゃない?」と勧められたのが、マツエクとの出会いでした。
試しに施術を受けてみたら、施術前後の違いに感動して!当時から目元に力を入れる女性が多かったため、たくさんの女性を感動させられる技術だろうなと思いましたね。細かい作業が好きだったこともあり、「これは天職になるかも!私もだれかを感動させたい」とすぐにマツエク講習を受け、父に資金を借りて大阪の江坂にサロンをオープンするに至りました。
家族の勧めや後押しでマツエクサロンをオープンしたのですね!サロンは3人で始めたのですか?
当時は弟も妹も関東にいたので、弟の手を借りることもありましたが、基本的にほとんど私ひとりで開業準備をしてオープンしました。その2年後に関東にサロンをオープンする準備の段階からは妹も加わり、現在3人で事業を運営しています。
オープンをした当時、サロンをオープンした江坂にはまだマツエク専門サロンはありませんでした。美容業界についてもよくわからないし、施術の正解もわからない。そんななか、すべての判断・行動基準は、「どうすればお客様に喜んでいただけるか」という点でした。施術をやればやるほど課題が出てくるので、どうしたらクオリティが高くなるのか、スピードをアップできるのかと、試行錯誤しながら毎日の施術に臨んでいたという感じです。
施術後に違いがはっきりわかるため、喜んでくれる人も多かったですね。はじめは周知されておらずお客様も少なかったのですが、地域の集客クーポンなどをフル活用して徐々にお客様も増え、半年後にはスタッフを雇うまでになりました。
永井さんが商材の開発を始めたきっかけは?
事業を始めた当初、複数のメーカーのものを仕入れていたのですが、メーカーによって名称やカール感、長さなどの基準が統一されていなかったんです。施術をするにあたり、それがストレスで……!自分の求める基準に適したわかりやすいものを作るため、商材開発をすることに決めました。
初めに手掛けたのは、エクステのラッシュです。私がこだわっていたのは、柔らかい手触りと自然な仕上がり。工場と直接やり取りして、先端の細さをミリ単位で何度も調整するという工程を繰り返しました。今思い返すと工場の方には迷惑をかけただろうなと思うのですが、本当に納得がいくものが作れなければ前には進めません。数年かけて手触りとカール感にこだわったエクステのラッシュを作り、販売するに至りました。
完成したラッシュはカールの太さや種類も増え、極柔フラットラッシュシリーズとしてありがたいことに多くのサロンで導入されています。
永井さんのこだわりが詰まった商材なのですね!他にもこだわっている点はありますか?
大事なのは、お客様の目元に使う商材の質です。だから、お客様に直接関係のないところにコストをかけるのはどうしても気が進まなくて、パッケージには極力お金をかけていません。もちろんすてきなパッケージは心も躍るし、仕事のモチベーションになることだってある。しかし、どうしても商品価格が上がってしまいます。どうせ捨てることになるパッケージなら、商品そのものに傷がつかないという最低条件をクリアすれば、簡易的な梱包で充分だというのが、私の考えです。
デザインでもなんでも外注してプロに頼むとお金がかかってしまう、それなら私がやろうと何でもやっていたら、何でも屋と呼ばれるようになりました(笑)そのコストがあるなら、商品価格を下げたり従業員の給与に反映したりと、違うところで使いたい。商品自体のクオリティは妥協せず、パッケージやデザインといった商品のクオリティに関係ないところはシンプルにすることで、お求めやすい価格を実現する。これがAngelicの商品の特徴です。
アイラッシュ施術者を育成するにあたっての想いとは
マツエク商材メーカーとしていい商品を提供しているという自負はありますが、マツエクの仕上がりは技術力が8割くらい関係していると考えています。また、ちゃんとしたアイラッシュ施術者が増えないことには、今後業界が発展していかない。それが、アイラッシュ施術者の教育に力を入れている理由です。
今後、「マツエクってあったよね」と言われるような技術にはしたくありません。マツエクが消えてしまうことは大きな経済からすると小さい動きかもしれないけど、携わっている人たちの仕事や経済の動きをなくしてしまうことになる。アイラッシュ業界の未来は施術者あってこそのものなので、技術のクオリティを高めていくことは、5年後、10年後の業界を守っていくことにもなると思います。そのためにも、まつげ1本のことを真摯に考えることのできる施術者を増やしていくことが、今の目標です。現状を当たり前と思わず、施術者ひとりひとりがしっかりと考えられるようにならなくてはなりません。
マツエクは自まつげにエクステをつけるだけの簡単な技術と思われがちですが、実は奥が深い技術です。ひとつひとつの工程に、すべて意味がある。施術直後にきれいなのは当たり前で、目指すべくは普段の生活で違和感がないこと、そして3週間後もきれいな状態であることです。マツエクを装着しながら生活をしていても違和感がない、3週間後に自まつげが伸びても方向性が乱れていないという状態が、アイラッシュ施術者の提供するべき形だと思っています。ちょっとした作業であっても、何のためにこの工程を行う必要があるか考えながら施術をすることで、仕上がりのクオリティも3週間後の状態も全然違うんです。
業界のこれからを支えていくのは、考える力のあるアイラッシュ施術者。ここまで意識できるアイラッシュ施術者が増えれば、今後のアイラッシュ業界は安泰でしょう。ただつければいいというのではなく、しっかり考えることのできる施術者を増やしていきたいと考えているため、スクールでは技術はもちろん考えることの重要性もしっかりと伝えるようにしています。
永井さんが大事にしていることとこれからのアイラッシュ業界について
仕事をするうえで最も大切だと考えているのは、お客様から信頼される技術や商品を提供することです。そのために、日々サービス力を更新しています。自分ひとりでできることは多くはありませんが、ひとつひとつのことに全力で取り組んでいるつもりです。
現在はマツエクが広く浸透し、サロンもたくさん増えました。それによりマツエクメニューの価格破壊が起こっていることが、懸念事項です。アイラッシュ施術者は苦労してたくさんのメニューのスキルを身に付けても、開業する際の価格設定は周りに合わせて低くしてしまうことが多い。自分の技術に自信と誇りを持ち、きちんとした対価をいただけるアイラッシュ施術者が増えれば、業界全体の価格破壊を抑えることができるのではないかと思っています。
サロンを経営するオーナーさんにおいても、お客様の数年後や施術者の働きやすさまで考えたサロンを作って欲しいなと思いますね。残念なサロンがマツエクに対する残念な印象を作ることもあるし、それではマツエクをしようと思う人も増えません。今でこそ美容業界も働きやすいサロンが増えていきていますが、スタッフを雇い始めた頃は、有給が使えない、残業代が出ないといった、業界特有の慣習がありました。このままではこの業界で働き続けられず、業界全体が廃れてしまうのではないか。このイメージを払拭するために、私は福利厚生の充実など働きやすい職場環境に力を入れているし、他のサロンにもそうであって欲しいなと思っています。
まとめ
お客様とアイラッシュ施術者にとって本当に必要なものを届ける商材開発と、アイラッシュ業界の将来を支える施術者育成に力を入れている永井さん。アイラッシュ業界のこれからを真摯に考え、全力で行動していることが、インタビューのひとつひとつの言葉を通して感じることができました。今後の永井さんの活躍、楽しみにしています!220216Ess