小規模サロンが勝ち抜くための経営論を伝授!ECOLE nina主宰 山中麻里江氏インタビュー
アイラッシュサロン経営のほか、小規模サロン向けの経営スクールなどを展開する「ECOLE nina(エコール ニーナ)」の山中麻里江さんにインタビュー。山中さんは、2022年4月に開催された「アイラッシュワールドカップ東京 2020」決勝戦でMCを努められたことでも注目を集める方です。現在は、小規模サロンに対して集客と売上アップの技術を伝える講師業をメインとされているそう。マツエクとの出会い、SNSを活用したマーケティング&ブランディング、そして山中さんのこれからの展望を伺いました。
経営者プロフィール&現在の事業内容
山中麻里江(やまなかまりえ)
1982年生まれ・埼玉県出身
窪田理容美容専門学校卒業
美容師免許所持
管理美容師免許所持
ECOLE nina(エコール ニーナ) 主宰・主任講師
2010年、恵比寿駅前でマツエクサロンをオープン。オープン半年後にはリピーター様で予約がいっぱいになり、スタッフを雇用。その後も満席の状況が続き、2014年に恵比寿にて拡大移転。さらに銀座店を出店し、現在はスタッフ6人を抱え、月商600万円(サロン売上のみ)を達成。現在は、経営スクールの講師業を精力的に行っている。
現在の事業内容を教えてください。
1つめが、サロン運営。アイラッシュ・アイブロウ専門店の「nina」というサロンを恵比寿と銀座で展開しています。2つめは商材販売。オリジナルアイラッシュブランド「CLINFLES(クランフレス)」を立ち上げ、商品開発や販売を行っています。
そして、今最も注力している仕事がスクール運営です。小規模サロンに向けた経営スクールを行っています。スクールでは技術ではなく、小規模サロン向けの経営セミナーやオンラインスクールがメイン。これまで1,500人くらいの方に、ご参加いただきました。
独立までの道のり ~美容師の経験を活かし、トータルビューティを提案できるアイラッシュ施術者に~
アイラッシュ業界に興味を持ったきっかけを教えてください。
最初のキャリアは、美容師だったんです。接客はもちろん、お客様のために自分の手で何かを施すのも好きだったんですが、実はカットが苦手で…(笑)美容師を退職後、2年ほど自分の興味のある職を転々としていました。アパレルも経験したのですが、アパレルは誰かが作ったものを販売する仕事。接客は得意だったので、売り上げは上々だったのですが、達成感を得ることは中々できずにいたんです。「自分の手で施すことでお客様を喜ばせたい!」と、その時、強く再認識させられましたね。
その頃、友人がマツエクの仕事を始めたことから興味を持ち、美容師免許を活かして仕事ができるならと、マツエクの仕事をはじめたのがアイラッシュ業界に携わるきっかけです。
実際にアイラッシュ業界でお仕事をされ、美容師時代との違いは感じられましたか?
私が美容師時代からこだわっているのは、再現性の高い仕上がりをつくるということ。お客様の要望を聞き、提案し、お客様に似合うものを再現するということは、美容師でもアイラッシュでも変わらないな、という印象です。お客様の雰囲気やファッションなどを考慮し、トーテルバランスを見てデザインを提案するという美容師時代に培ったスキルは、マツエクの施術にも活かすことができました。
しかし、今でこそマツエクの施術にもトータルビューティの概念が根付いていますが、2008年当時は、まつげの状態や目元だけを見て提案するのが一般的。また当時はマツエク=ギャルが付けるものというイメージが強く、とにかく長く・濃く・派手なデザインが良しとされている時代だったと思います。
ただ私自身、派手なテイストを好んでいなかったこともあり、ナチュラルなファッションやメイクの方でも楽しめるマツエクを考えると、トータルでの提案が必須だと考えていたんです。当初からトータルでの提案ができたことは、他店との差別化を図るという点では功を奏したのかなと思います。
SNSの活用について ~切っても切れないSNSでの集客~
個人のInstagramでも1万人を超えるフォロワーがおられ、インフルエンサーとしてもご活躍の山中さん。日々の投稿を楽しみにしているアイラッシュ施術者も多いのではないでしょうか?そこで、ここからはSNSの活用術についてお聞きしました。
サロンでの集客や売上アップにおいて、やはりSNSは重要ですか?
実はニーナでは、今でこそ広告を使用していますが、2年前まで一切使わずに集客してきたんです。オープン当時からアメブロやInstagramを活用して集客をしていました。今では当たり前にSNSでの集客が行われていますが、当初からダーゲットを設定してコンテンツを打ち出す、独自性や専門性をわかりやすく表現するということにこだわって発信していたこともあり、SNSでも十分集客できていたんです。今の時代、SNSは生活に根付いており、情報収集のツール、検索ツールとしても使用されていることもありますから、SNS活用は重要だと思います。
SNSを活用する際に大事にされているポイントを教えてください。
数あるサロンの中から自分のサロンを選んでもらわないといけないですよね、だからこそ、きちんとターゲットを設定した上で、サロンの専門性と独自性を見せるということが大切だと考えています。
ターゲット設定とは、悩みにフォーカスをするということ。例えば、「一重まぶたのお悩みないですか?」「まぶたが下がるお悩みないですか?」といった、ピンポイントな悩みを持つ方をターゲットとして発信しています。写真を見たら誰かに絶対に響かせることを意識して、コンテンツを制作しています。
不特定多数へ発信するのではなく、きちんとターゲット設定をし、特定の悩みを持つ方へピンポイントに情報を届けることが有効なのですね。
がんばって投稿していても、他店と差がない投稿では選ばれづらいですよね。ただ「マツエクやりましょう」「まつげパーマおすすめです」では意味がないと思います。うちのサロンに来たら【こんな悩みが解決できて、こんな風になれるんだよ】というところまで、フォーカスして発信していかないと、集客には繋がらないと思います。
個人サロンの経営者さんの中には、インスタのフォロワーがなかなか伸びないと悩んでいる方も多いようです。しかしピンポイントな情報を届けられていれば、フォロワー数はさほど気にしなくてもよいものでしょうか。
もちろんフォロワーは多い方がよいとは思うのですが、フォロワーが自サロンのファンか、親しみやすいさを感じているか、という事の方が大事だと思います。
ただ、そもそも自分のサロンがしっかりとターゲット設定できていないと、他店との差別化を図る訴求点は作れませんよね。だからこそしっかりと自分のサロン、自分自身と向き合い、何がしたいかを見極めたうえで、SNSの活用することが大切ではないでしょうか。
小規模サロン向け経営スクールの講師業について ~失敗談から成功へと導く~
講師業をはじめられたきっかけを教えてください。
1人でサロンをオープンし、事業拡大してきましたが、私自身はスクールでビジネスを学んだり、経営のサポートを受けたりということなくやってきました。試行錯誤しながらも自分自身でやってきたこの経験を、皆さんにも活かしてほしい、小規模サロンを経営されている方の道しるべになれば、と思ったんです。また、私の経験をお伝えすることで、より早く経営を軌道に乗せてほしいという思いもあり、講師業をはじめました。
生徒さんからは、集客や売上がアップしたという喜びの声はもちろん、スタッフ育成がうまくいくようになったという、うれしい声もいただいています。
山中さんの講義では、スタッフ育成のノウハウも学べるのですね!
私自身、人を育てるのは不得手だったんです。過去の私の失敗談があるからこそ、生徒さんに活かしてもらえたらな、と思っているんです。結局、接客や売上をつくることは自分1人でできることですが、全員が同じ価値観ではないので対スタッフとの関係づくりは難しかったですね。スタッフ育成面もクリアできてきた今だからこそ、成功例だけでなく、失敗例も含めて伝えていきたいと思っています。
スタッフ育成への対応で、失敗例・成功例があればお聞かせ願えますか?
同じ内容だとしても、伝え方が大事だと感じています。例えば、スタッフが私の指示どおりにできていないということがあるとします。失敗していた頃は、「なぜ、こうなっちゃったの?!」と、原因の追究からスタートしていました。でも今は、スタッフがどのような考えのもとに行動したのか、まず事情から聞くようにしています。一方的にダメ出しをするのではなく、まずはスタッフの意見を尊重すること。それを意識するだけで、スタッフとの良好な関係が気付けるのではないでしょうか。
また失敗していたころは、言いたいことが10個あったら全部言うという感じでしたが、今は半分に留めたり、小出しにして伝えたり、言いたい感情を2割に抑えたり、と工夫もしています。人それぞれ、スピード感や能力に違いがあり、個性があることをしっかり認識する姿勢が大切ではないでしょうか。
こうした考え方の根底には、マツエク業界全体が盛り上がってほしいという思いがあります。アイラッシュ業界は個人経営のサロンが多いからこそ、小規模サロンに焦点を当てたコンサル、講師業を行っているんです。自身の経験を少しでも活かしてもらうことで、小規模サロンでも安定した売り上げをあげられる、そんな体制をつくるサポートができたら、と思っています。
今後のアイラッシュ業界について ~再現性と付加価値のある施術・経営がカギ~
今後のアイラッシュ業界にとって大切なことは?
マツエクサロンやアイブロウサロンが増えてきている今、業界の将来を考えると、各サロンがカラーを持っていないとうまくいかないと思うんです。やはり独自性・専門性がしっかりと謳えるサロン作りをしないと長期的な経営は難しい、オリジナリティを持つことが大切だと思います。そして差別化したサロンの提案を、SNSなどをうまく活用し、認知させていくというのが1番いいのではないでしょうか。
アイラッシュ業界をけん引する1人として、山中さんご自身が大事にされていることは?
施術の面では、再現性のある仕上がりとして提供し続けること。どなたにも、その方に似合うアイデザインが必ずあると思っているので、トータルで見た提案をし、お客様が理想とするデザインに仕上げる。さらに、接客や雰囲気などで付加価値を付け、最後に笑顔になって帰っていただけるよう努めています。
また講師・コンサル業の面でも、再現性と付加価値を大切にしています。マツエクの技術を教えてくれる人はたくさんいるけど、経営を教えてくれる人ってなかなかいませんよね。だから私は技術ではなく、経営の講師をやっているんです。私の経験や知識をもとに、ひとりで悩んでいる方、困っている方にフォーカスしたサポートを行うことで、アイラッシュ業界でがんばっている小規模サロンさんが安定した経営ができたらいいなと思っています。ひいては、アイラッシュ業界全体の繁栄に繋がることを願っています。
まとめ
マツエクの仕事をはじめて、半年後に独立開業を果たした山中さん。経営的なサポートやビジネススクールに通うことなく、試行錯誤の中、文字どおり“独立”された山中さんだからこそ、小規模サロン向けに特化した経営術を伝えることができるのでしょう。生徒さんのためになるならと、自身の経験を盛り込んだ講習を行われていまし。それも全ては、アイラッシュ業界全体の底上げと繁栄のため。アイラッシュ業界の縁の下の力持ちであり、SNSで発信しつづけ表舞台にも立つ山中さんから、目が離せません。220417Euk