美容師国家試験に「まつげエクステンション」を導入?厚生労働省の発表を解説
美容師国家試験の内容の見直しが進んでいます。2022年3月30日、厚生労働省の「美容師の養成のあり方に関する検討会」で、今後の方向性が固まりました。アイラッシュ業界として注目すべきは、実技試験。マツエクの導入が検討されているのです。今回は、厚生労働省発表の情報をもとに、美容国家試験の変更案と経緯をまとめました。これから美容師国家資格を取得し、美容師やアイラッシュ施術者として活躍したい方や、サロンでアイラッシュ施術者の育成に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
「美容師の養成のあり方に関する検討会」とは?何を検討するの?
「美容師の養成のあり方に関する検討会」は、厚生労働省主催の有識者会議です。
会の目的は、 美容師国家試験や養成施設での美容実習の内容を現場のニーズに近づけること。2022年1月から4月までに、過去3回開催されています。
「美容師の養成のあり方に関する検討会」は、座長である江戸川大学副学長・宮崎孝治(こうじ)氏を含む、以下のメンバーから構成されています。
<「美容師の養成のあり方に関する検討会」構成員>
・一般社団法人日本美容サロン協議会副理事長/株式会社エアーエンターテインメント 代表取締役社長 岩田卓郎氏
・公益財団法人理容師美容師試験研修センター理事長 遠藤弘良氏
・公益社団法人日本理容美容教育センター理事長 谷本穎昭氏
・専修学校徳島県美容学校理事長 原恒子氏
・江戸川大学副学長 宮崎孝治氏
・全日本美容業生活衛生同業組合会理事長 吉井眞人氏
・株式会社ViVidy(ヴィヴィディ)代表取締役/中小企業診断士 津田まどか氏
・公益社団法人東京都眼科医会会長/眼科医 福下公子氏
構成員のディスカッションに加え、全国の美容師と美容師養成施設の施設長を対象とした「美容師養成のあり方に関する意識調査」も実施。 現場の意見を尊重した協議が行われています。
2022年3月30日実施の第3回検討会では、2022年度の方針が以下の3つに固まりました。
・養成段階の知識技能の取得の推進
・養成段階から就業後の人材育成の連携、接続
ここからは、1つ目の「美容師国家試験(実技試験)の改善」ついて詳しく解説します。
<実技試験の変更点1>マツエクを導入
今回の検討会で美容師国家試験における実技試験に「まつ毛エクステンション」導入が検討されることになりました。
なぜ、「まつ毛エクステンション」の導入が検討されるようになったのでしょうか?
検討会の構成員のひとり、東京都眼科医会会長を務める福下公子氏によると、これまでマツエクが原因の皮膚炎や角膜障害、感染症といった健康被害が多数報告されてきたのだそう。
アイラッシュ施術者の美容師免許取得義務化に伴い、マツエクが原因の健康被害は減りつつあります。しかし、現行の美容師国家試験でもマツエクに関する出題は、筆記のみで実技試験は行われていません。
ますますニーズが高まる マツエクの安全性を確立するためには、養成段階からの見直しが必要と判断されたのです。
美容師を対象に行なわれた「美容師養成のあり方に関する意識調査票」では、マツエクの技術取得に関する意識調査も行われました。
なお、回答数658のうち、マツエク専門店での勤務経験者が98名含まれています(複数回答可)。
現役の美容師・アイラッシュ施術者は、マツエクの実技試験導入についてどのように感じているのでしょうか?
結果は以下の通りです(複数回答可)。
・「今後、将来を含め、現場での事故が発生しないように学べるような環境を目指して欲しい」61.9 %
・「現在のニーズは乏しいが、将来的なニーズを見据えて技術の習得を図るべき」8.5%
・「現場でのニーズは特段なく、現在の取り組みでよい」8.8%
・「無回答」2.9%
(厚生労働省「美容師養成のあり方に関する意識調査票」集計期間:2021年12月、2022年2月、調査数658)
現時点ではもちろん、将来的なニーズも見込み、 マツエクのスキルアップが可能な環境整備の推進をのぞむ声が多く挙がりました。
<実技試験の変更点2>オールウェーブセッティングは廃止に
マツエクの実技試験の導入が検討される一方、廃止を検討されている項目もあります。
それが 「オールウェーブセッティング」 です。
現在行われている美容師国家試験の実技試験は「カット」と「パーマ」の2種類。パーマは年度によって「オールウェーブセッティング」と「ワインディング」のどちらかが出題されます。
オールウェーブセッティングは、美容師が習得すべき基礎的技術のひとつとして、長年実技試験に取り入れられてきました。一方で、ほぼすべてのヘアサロンで現在は使われていないというアンケート調査結果も。
現役の美容師は、オールウェーブセッティングの廃止についてどのように感じているのでしょうか。
先ほどご紹介した「美容師養成のあり方に関する意識調査票」では、オールウェーブセッティングに関する調査も行われました。
結果、調査に参加した美容師の 過半数が、「美容師が備えておくべき必要な基礎的素養・技術ではなく、国家試験として問う必要は低いと思う」と回答 しました。
同じく実技試験の課題である「カット」や「ワインディング」に関しては、8割以上が「美容師が備えておくべき必要な基礎的素養・技術であり、国家試験として問うのは適当」と答えていますので、その差は歴然です。
教科課程の基準の運用はどうなる?早ければ2023年度に結論が
美容師国家試験の内容が変更となると、当然ながら美容師養成施設の教科課程も変更が必要です。では、どのような流れで変更が進んでいくのでしょうか?
厚生労働省は、公益財団法人理容師美容師試験研修センターに対し「まつ毛エクステンション」を実技試験に導入した際、公正・公平に試験を行えるか」を2022年度中に明らかにするよう要請。並行して、オールウェーブセッティングを含める現行の実技試験科目の継続についても、2023年度の早期には結論づけるよう、示しています。
また、マツエク同様「現場でのニーズはあるが、現時点では実技試験には取り入れられていない技術」として「ヘアカラー」が挙げられます。
ヘアカラーの実技試験導入の可否についても、検討・研究が進められる予定です。
美容師養成施設に対しては、試験課題の変動に関わらず、美容実習については以下のような内容が望まれます。
・試験課題に偏らない
・就職先のニーズを踏まえている
しかし、実習時間の中で取り上げる内容には限りがあります。すると、必然的に 優先度が高くなるのが、美容師国家試験の実技試験の科目といえるでしょう。
現状の教科課程では、オールウェーブセッティングの練習に多大な時間を設けています。
これは、美容師国家試験の実技試験対策として必要だからです。
多くの養成施設が現場での即戦力となりうる美容師の養成を掲げる一方、この実習時間の配分は矛盾しているのではないでしょうか。
もちろん、オールウェーブセッティングにも、美容師として必要な技術が含まれていますが、実技試験の内容が変更となれば、ヘアカラーやマツエクといった、より就職先やお客様のニーズに合った、 本当の意味での「即戦力となりうる技術」の習得が期待されます。
まとめ
2023年度に向け、美容師国家試験の試験内容や資格取得のための必須科目の見直しが進んでいます。現在のサロン運営やお客様のニーズにあった美容師養成制度や資格制度への改革が今後進んでいくことでしょう。
アイラッシュ施術者やサロン運営者としては、マツエクの実技試験が導入されるのか、今後も注目していきたいですね。220519Ema4