JABSから行政改革担当大臣へ美容業界全体の改善を提言!その内容とは?

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2021年6月4日、美容サロン経営者らで構成される一般社団法人 日本美容サロン協議会(以下JABS)は、河野太郎行政改革担当大臣(当時)と面会し、美容業界の教育課程や働き方の改革に関する提言書を手渡しました。本記事では、JABSが美容業界全体の改善を行政に提言するに至った経緯と、主な提言内容についてまとめています。美容業界の大きな改革につながる今回の提言、今後の動向も含めて注目していきましょう。

JABSが美容業界全体の改善を行政に提言

JABS(一般社団法人 日本美容サロン協議会) 美容業界全体の改善を行政に提言出典:Beautopia

まずは、JABSが立ち上げた「美容サロンに関する議員勉強会」について詳しくご紹介します。

「美容サロンに関する議員勉強会」立ち上げの背景

JABSは、美容業界全体の発展を目指し、美容業界と行政のパイプ役を担う役割を目的に2017年に設立されました。サロン現場の声を行政に届けるべく働きかける中、2019年に上野賢一郎衆議院議員を会長とした「美容サロンに関する議員勉強会」を立ち上げ、勉強会を開催。勉強会には上野会長をはじめ7名の議員が参加し、JABSと美容業界が抱える問題について意見交換を行っています。

勉強会を重ねる中で、美容業界をとりまく問題を解決するための課題として、人材確保や教育課程が挙げられました。それらの問題の解決には、行政による規制改革が不可欠と判断し、今回の提言に至ったのです。
1年半の間に全5回開催された勉強会では、美容業界における教育と試験の制度、インターンシップをテーマに、現在の教育内容や試験内容が現場で必要とされる技術とかけ離れていること、またそれらを原因とする現場トラブルについて意見交換が行われました。

「有志勉強会による美容師制度に関する提言」について

その後、勉強会で要望書のたたき台が作られ、最終的に取りまとめた提言書が6月4日「有志勉強会による美容師制度に関する提言」として、永田町の大臣執務室にて河野大臣(当時)へ手渡されたのです。

手渡された提言書に盛り込まれた主な内容は、次の5項目です。

  • 美容師国家試験の改革
  • 実践的な実務研修制度の創設
  • 外国人美容師に関する就労特区の支援
  • 美容師の働き方改革の推進
  • 美容室のコロナ対応への支援


と、中でも早急に解決する必要がある問題について、具体的な要望が寄せられています。
当日は、美容サロンに関する議員勉強会のメンバーが出席し、河野大臣と面会しました。その後、衆議院第一議員会館に場所を移し、記者説明会を実施。提言の内容や背景についての説明を行い、メディアも注目する案件となっています。

その後7月29日には、美容師制度のあり方を議題に「第18回 投資等ワーキング・グループ」がオンライン会議で行われ、河野大臣出席のもと具体的な議論が交わされました。このワーキング・グループでは、6月に手渡された「有志勉強会による美容師制度に関する提言」の詳しい内容説明がされ、中でも、実践では活かされない技術が試験内容にあることから、その習得に多くの時間が割かれている問題について取り上げられています。
河野大臣からは、教育内容や資格試験について「時代の流れにあった内容に、速やかに修正する必要がある」との発言があり、厚生労働省においては討論会を設置して改革について議論を進めることとなりました。

「有志勉強会による美容師制度に関する提言」その提言内容とは?

今回JABSから提出された「有志勉強会による美容師制度に関する提言」について、主な内容を項目ごとにまとめました。

美容師国家試験の改革

美容業界では専門学校で習得する技術が、サロンの現場で必要とされている技術とかけ離れていることが問題視されています。美容学校で実技試験に必要な実習を800時間以上設けている理由は、国家資格取得を目的とした教育カリキュラムを組む必要があるから。そのため、就職後のサロンワークで必要な実技に割く時間がないのだろうと考えられています。

JABSが行ったアンケートでも、特にオールウェーブセッティングは、アンケートに回答した美容師の35%が「習得したが現場では使っていない技術」として挙げています。反対に美容学校で学んでおきたかった技術としてカラーリング等が挙げられていますが、実技試験が実施されないことからカリキュラムに組まれていないようです。
その他、まつ毛エクステンションの技術についても、必修としている学校が少ない理由は、実技試験が実施されていないことが考えられます。

以上のことから、即戦力としてサロンの現場で必要な技術の習得には、国家資格試験の内容の見直しを行う必要がある、という内容でした。

実践的な実務研修制度の創設

現状として、美容学校が実施している実務研修で、思うような実務の習得が見込めていないことが問題視されています。サロンでのトラブル発生を心配する声や、通常1~2週間と短期間の研修であること、携わる業務が限られていることなどから、効果的な実務研修が実施されていません。

つまり、現在の制度では、サロンで実際に働くような実務研修が行われていないということ。
この問題を打開するためには新しい実務研修制度を作る、具体的には美容学校の学生証を仮免許のような扱いにし、アシスタント業務など一定の範囲の業務を認めるような制度を作ることが望ましいと考えられる、という内容でした。

外国人美容師に関する就労特区の支援

日本を訪問する外国人や日本在留外国人の増加にともない、インバウンド対応から外国人美容師への期待は大きく、就労に関して早急に管理の体制を整えることが必要。
現在は国家戦力特区における実証検討中の段階ですが、管理団体方式という特定の団体のみの管理に留まらない制度が整備されることを要望するという内容。

美容師の働き方改革の推進

一般的に美容師はブラックだという風潮があり、この原因の一つとして挙げられるのは、技術の習得や働き方と賃金の関係
現状として、美容学校卒業後に即戦力として働けない状況では、一定の教育期間を取らざるを得ません。国家資格の内容や、それに伴う教育カリキュラムの見直しにより、即戦力に近い形で就業できる状況を作ることが、ある一定の解決策に繋がると考えられています。

サロン現場で必要とされる技術を国家資格の実技試験に盛り込むことで、美容学校の教育カリキュラム自体も変わるはず。そのための根本的な改革が望まれるというのが、美容師の働き方改革を推し進める提言内容でした。

美容室のコロナ対応への支援

新型コロナウィルスの感染拡大により、美容業界においても各種式典等の見合わせや外出自粛による厳しい経営状況が続いているため一定の支援が必要です。
具体的には、支援金について申請事務の簡略化や迅速化及び早期の支援金支給家賃支援金の再支給開始、一部自治体で実施中の「美容クーポン」のような施策の検討を要望しているそうです。

今回は、以上の5項目について提言書に盛り込まれ、7月29日に実施された「第18回 投資等ワーキング・グループ」でも詳細の説明が行われました。
また、JABS側からは、サロン数増加に伴う競争が激化する一方、新たに美容免許を取得する人数が右肩下がりになっていること、新人美容師の約3割が1年以内に離職をしてしまう現状についても触れられています。この件については、河野大臣をはじめ厚生労働省も早急な対応が必要との理解を示し、今後随時改革が行われるものと思われる、という内容でした。

まとめ

JABSが行政に提言した、美容業界全体の改善についてまとめました。今回の「有志勉強会による美容師制度に関する提言」は、長年美容業界が抱えてきた問題を改善する具体的な要望が盛り込まれています。また、美容師の職域であるまつ毛エクステンションに関し、現状では筆記試験で1~2問程度の出題、実技試験が行われていないことにも触れられました。サロン運営にも大きく影響がありそうですので、今後の改革内容に注視が必要です。211028Eia

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